キャリアガイダンスVol.442
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自分のレベルも設定したうえで、そこに向かうための作戦も考え、日々の授業で実践。授業の終わりに〇か△かで自己評価し、週ごとや単元ごとの振り返りも行う。 同授業を受けもつ豊岡優子先生は、「対話すること」と「やってみること」を大切にしてきたという。「生徒が目標や作戦を立てるとき、最初は介入しませんが、悩んでいたら話しかけます。話を聴くと生徒の思いが出てくるので『いいね、それを書こうよ』と促すのです。何もしないうちから『できない』と思い込むこともあるので、『まずはやってみよう』とも促します。やってみてどうなるか感じて、難しいことがあれば、そこをまた一緒に考えよう、と」 生徒の成長も感じている。気づけば、まだ評価が低いステカの項目を、生徒が自分で探すようになった。そこで目標を設定し、作戦を立て、改善すれば、未来は変えることができ、達成感も味わえることを知ったからだ。 もちろん人にはそれぞれの特性があり、克服しづらい弱みもある。だから3年生の終盤では、領域「私の時間」で、社会に出たら自分の弱みにどう対応するかを、強みの生かし方と合わせて考える。弱みの克服を目指してもいいし、その弱みを受け入れ、「あらかじめ周囲に説明する」「周囲に助けを求める」といった代替策を考えてもいい。何を選択するかは本人次第。でもこの作戦も仲間と一緒に考える。弱みもある自分のことを「友達が受け入れてくれた」「相談にも乗ってくれた」ことで、気持ちが楽になる生徒も多いという。 活動を通して先生たちが実感したこともある。未来に向かって「生徒が考える」ことと、その構想をもって「人と関わる・実践する」ことの掛け合わせが大事である、ということだ。「ステカを使えば、今の自分や、なりたい自分を一応は考えられます。でもそれはまだふわっとしたもの。そこから仲間や教員との対話で気づきを得たり、実習で自分の強みや弱みについて納得したり、卒業生や先輩と話すなかで憧れを抱いたりと、実体験の蓄積があって初めて、ストンと腑に落ちる今の自分、なりたい自分ができてくるんです」(古江先生) すると、なりたい自分の描き方も変わるという。最初はステカや資料を参考に「何々したい」「何々したい」とブツ切れの言葉を並べていたのに、次第に「何々をしたいから、こんなことをやって、こうしたい」と、言葉が有機的に結びついていくのだ。 あなたは何のために働き、どんな未来に向かいたいのか。そのことを、借り物の言葉ではなく「自分の言葉で書けるようになった」ところに、磯村先生は生徒の成長を感じている。1997年創立/園芸技術科・工業技術科・生活技術科・福祉・流通サービス科/生徒数280人(男子208人・女子72人)/知的障害のある生徒を対象とした高等部単独の特別支援学校。2020年より文部科学省指定「研究開発学校」。学校データ流山高等学園のカリキュラム・マネジメント左側の「私の時間」では、ステカを活用したり卒業生の講話を聴いたりして、作業面から生活面まで幅広い今と未来を想定。理想の未来に向かう作戦も考える。そのうえで、右側の学校生活全般で作戦を実行し、SHRなどで振り返る。さらに左側の「私の時間」で要所の振り返りも実施。このほか、園芸や福祉などの専門教科の授業でも、ステカを活用し、主に作業面について、見通しを立て、実践し、振り返ることをしている。 専門実習では、織り機で糸を紡ぎ、布を織ることをしています。最初は難しかったですが、ステカにある「作業のスピード」も今は上がり、「継続力」もつきました。今がんばっているのは「報告と相談」。私は記憶するのが苦手なので、報告のためにメモを取っています。メモの取り方は、相談会で先輩に教わりました。 この学校の好きなところは、友達がいっぱいできて、先生方や先輩方も優しいところ。みんなからの他者評価では、私には作業面でまだ足りないところがあるので、これからも改善していきたいと思っています。力をつけて、親にも感謝の気持ちを込めて何か贈ったり、親孝行もできるようになりたいです(原田さん)。 製品作りのなかで、生地を一つひとつ組み合わせ、ミシンで縫うことをしています。ステカにある「安全管理」を大事にすることで、針を折ることや、指を怪我することはなくなったので、今は「反省と改善」に取り組んでいます。ミスがあったら行動を振り返り、改善点を見つけ、次に生かすんです。初めてミスなく製品を作れたときは「やればできる!」と嬉しくなりました。 将来もミシンの仕事がしたいです。あと、一人暮らしもしたい(笑)。社会に出て一人でやっていけるかは、まだ不安です。でも、生産量のことをみんなで協力して考えたり、声をかけ合って作業するのは好きなので、そんなふうにがんばれたらいいなと思います(村井さん)。●オリエンテーション●私のHOPE●自己分析・課題設定●先生相談会●ようこそ卒業生●3年生相談会●私ノート●卒業後のHOPE●各教科の授業●総合的な探究の時間●特別活動 (HR、行事、生徒会活動)●特別な教科「道徳」●自立活動左から、生活技術科2年生の村井 光さん、1年生の原田知佳さん生徒INTERVIEW友達がいっぱいできるこの学校でまだ改善できる部分を伸ばしたい目標を立てて達成することやみんなで考えることを楽しみたい舵取り、調整活動サイクルの実践私の時間 (35時間)各教科・領域生徒が自分で見つけた「働く」や「未来」を目指していく332022 APR. Vol.442いま、「働く」をどう考えるか「自分にとっての働く」を考える高校事例

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