キャリアガイダンスVol.442
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1913年創立。2004年福島成蹊高校に改称し男女共学校に。2009年福島成蹊中学校開校。校訓は、司馬遷『史記』の一節にある「桃李不言下自成蹊」(桃李もの言わざれども下おのずから蹊を成す)。深山の桃李は人目につかずとも、一度見つけ出されると人が足繁く通うようになり自然と小道が作られるように、人も高い徳操を備えれば、多くの人が慕い集うようになるという意。校名の由来でもある。福島成蹊中学校・高校(福島・私立)まとめ/堀水潤一 撮影/神田 仁 私の出身県でもある福島は、猪苗代湖、磐梯山、尾瀬など美しい自然に恵まれています。子どもたちの気質も穏やかで、すべきことを愚直にやりきります。一方で、全国学力・学習状況調査や模試の成績などさまざまな数字を見ると、残念ながら首都圏と比べ教育格差が生じていると言わざるを得ません。そうした現実は、福島の子どもたちの未来に関わってきます。公立志向が根強く、私学の選択肢も少ないエリアにあって、首都圏のような質の高い中高一貫教育が必要だし、特進コースの刷新強化などを通じて現状に一矢報いたい。それこそ、埼玉県と宮城県の私学を経て2004年、本校に赴任した私が抱いた使命感です。 実際、2009年の中学校開校と同時にスタートした中高一貫コースは、補講や課外授業を含め年間1500時間の学習量を確保しています。予備校に頼らず教師の手の届く範囲で質の高い教育を実現するには、それでも足りないくらい。こう言うと「勉強漬けなのか」と質問されますが、必ずしもそうではありません。私が中高一貫に拘ったのは、多くの経験を通して人格を陶冶したいから。その際、活きるのが福島の自然環境です。猪苗代湖強歩、尾瀬学習・燧ひうちがたけヶ岳登山などの自然体験や行事は6年間で67泊、91日に及びます。猪苗代湖を訪れる県民は多いけれど、対岸まで足を延ばし、湖越しに磐梯山を仰ぐ人は少ないはず。生徒の方が福島を熟知しているのです。 こうした体験は、簡単には折れない強い気持ちや、仲間意識を育みます。第一志望に合格した生徒が、受験を控えたクラスメイトのために登校し、机を並べる姿はその典型。結果、東大や医学部ほか首都圏の中高一貫教育校に引けを取らない進学実績や、高1で英検準1級合格者を複数生むなどの成果につながっています。鉛を金にすることはできませんが、人は何にだって変われる。教育の世界では錬金術が成り立つというのが私の持論です。 中高一貫コースに加え、福島成蹊高校には特進コース、文理選択コース、普通コースがあります。授業時数や補講の体制はコースにより異なりますが、共通するのは海外研修に力を注いでいること。異なる文化的背景をもつ同世代の声を聞き視野を広げてほしいのです。そのうえで自分の特性に応じ大学受験や探究活動やクラブ活動などで成功体験を積む。そのための選択肢を増やしたいと思います。 本校には109年の歴史があり、施設設備も整っています。ただ、「いい学校とは何か」と問われたら、いい教員がいることでしょう。その点でも本校はいい学校だと言い切れます。私のモットーは有言実行。言ったことは必ず実行してきました。後を託す先生方にも、失敗を恐れず行動してほしいし、生徒に対しては「手を抜けば必ず自分にふりかかる」と言い続けています。自分に厳しく、他を思いやり、真摯に努力できる人になってほしい、という願いも変わりません。さすれば自ずと多くの人が慕い、集まってきてくれるはずです。ほんだ・てつろう/1953年福島県南相馬市生まれ。東京理科大学理学部卒業。同大学理学専攻科修了。1977年聖望学園中学校高校に理科教諭として着任。埼玉県高体連登山専門部に在籍しレーニン峰(7134メートル、当時ソ連邦)に登頂。「夏休みに雪合戦をしたい」という生徒の要望に応じ、北アルプスで実施したクラス旅行も思い出。1989年古川商業(現 古川学園中学・高校)に赴任。進学コース長、教頭等を歴任し進学校化に尽力。この時期の6年、週1日仙台市の予備校で講師を兼任し教育力を磨く。2004年福島成蹊高校に教頭で着任。2009年より現職。首都圏の中高一貫教育校に引けを取らない進学実績を実現モットーは有言実行失敗を恐れず行動してほしい372022 APR. Vol.442

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