キャリアガイダンスVol.442
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392022 APR. Vol.442誌上 進路指導ケーススタディ 難しい生徒を、 どうチームで支えるか対応が難しい生徒に対して、一人ではなく「チームで対応する」。「チーム学校」のかけ声の下チームを立ち上げてはみたものの、話し合いがうまく進まないという声もよく聞きます。そこで今回は、みんなが元気になる、そんなチーム会議の進め方をご紹介したいと思います。取材・文/清水由佳 イラスト/おおさわゆう第23回かりまざわ・はやと●1986年岩手大学工学部卒業後、岩手県の公立高校教諭に。早稲田大学大学院教育学研究科後期博士課程単位修得退学。教育学、教育カウンセリング心理学を専門とする。2015年4月より現職。会津大学 文化研究センター教授 苅間澤勇人先生 【監修&アドバイス】進路指導に役立つ技法●ホワイトボード チーム会議 せっかくチームを立ち上げても、会議がうまく進まず頓挫する。忙しいなかで、会議が負担になって腰が引ける。そのようなことを避けるべく、効率が良く、成果が実感できる会議のあり方の一つが、ホワイトボードを活用した「解決志向」のチーム会議です。 その大きな特徴は3つあります。 一つは、時間を30分と切って、会議をだらだらしなくても良いという心理的な負担を減らすこと。 そして、全員がホワイトボードに向かい、そこに書く内容に集中して話をすることで、共通の目的・目標に向かっている実感を得られること。 そしてもう一つが、「原因探し」ではなく「解決志向」で行うことで、前向きな気持ちで会議が進むこと。解決志向のアプローチでは、「うまくいっていることは何か」を見つけ、そのうまくいっていることや役に立つことを積み重ねて解決の状態に向かいます。そのため、参加している先生方も、元気で前向きな気持ちになることができます。いわば、「みんなが元気になる」チーム会議と言えるでしょう。 その具体的な展開の仕方を、今回のケースを例に、次ページで示します。不登校気味で家族の協力も得にくく、進路を考えられない生徒進路指導担当者として、気がかりな高校2年生女子A子。1年生の夏休み明けから休みがちのようで、進路調査はいつも白紙のまま。1年次の担任によると、三者面談にも保護者は来ず、家庭環境としても進路を落ち着いて考えられる状況にはない様子。このままでは、進路が定まらないどころか中途退学にもつながりかねず、クラス担任の先生に声をかけ、チームを立ち上げて対応したいと考えました。【参加者】進路指導担当(自分)、クラス担任、学年主任、1年次クラス担任、部活(漫画研究会)の担当顧問、保健室養護教員、スクールカウンセラーありがちチーム会議意義は認めてくれるが、会議がうまく進まない…。 クラス担任の先生にまず声をかけたところ、「自分一人では対応が難しいと思っていたので、ぜひ」と乗り気の返事。その後、ほかの先生方にも声をかけると、おおむね前向きな返事をもらえて一安心。ただし、1年次の担任の先生は、「A子は家庭がねえ。親もまったく協力的ではないし、こちらが一生懸命になっても難しいかもしれないなあ」とやや悲観的な様子。会議の日程調整も、「新学期を迎えたばかりで忙しい」と、なかなか調整がつかなかった。 ようやく集まれたある日の放課後。会議冒頭で、「保護者面談をしたくても、全然電話がつながらない」という担任の先生の言葉から、次々に家庭環境の問題点が出始める。しかし、結局「家庭のことは難しいなあ」で、会議は行き詰まる。そして、「大変だとは思いますが、担任の先生には繰り返し保護者への連絡をがんばってもらって。あとは、A子が少しでも学校に来られるように、気づいたらみんなが声かけをしていく感じですかねえ…」と、あまり代わり映えのしない結論に。「せっかくチームを立ち上げても、結局解決策はなかなか出てこない」と、徒労感に包まれて会議は終了した。ホワイトボードを活用した「みんなが元気になる」チーム会議

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