キャリアガイダンスVol.442
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【学長プロフィール】やすい・としかず●1951年生まれ。城西歯科大学(現 明海大学)歯学部卒業。同大学院歯学研究科博士課程修了。歯学博士。1997年明海大学歯学部教授。2008年より現職。【大学プロフィール】1970年城西歯科大学として開学。1988年大学名を明海大学に変更。浦安キャンパス(千葉県浦安市)に、外国語学部(日本語学科、英米語学科、中国語学科)、経済学部、不動産学部、ホスピタリティ・ツーリズム学部、保健医療学部(口腔保健学科)、坂戸キャンパス(埼玉県坂戸市)に歯学部の6学部8学科を擁する。ここから先どう生きていくか。それを考えるだけの力を身につけ卒業してほしい̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/吉永智彦明海大学学長安井利一私が本学(当時 城西歯科大学)に入学したのは創立間もないころ。大学院修了後も大学に残り、歯学部長や付属病院長も務めたため、歯学教育あるいは教学マネジメントに一定の自信はありました。 けれど2008年に学長に就任し、歯学部がある坂戸キャンパスから浦安キャンパスに来たとき、文化の違いを感じたものです。国家試験合格という明確な目標がある歯学部と異なり、文科系中心の浦安キャンパスは方向性が多様でした。最初から「自分はこうなりたい」という確固たる目標をもつことは難しいと思いました。 そこで力を入れたのが初年次の基礎教育「学修の基礎」です。自分の特社会において、それをどう扱うか、あらゆる分野で問われているからです。医療でいえばAIの進化によって診断は正確になるでしょう。それでも医療人が必要なのは、患者さんに対する思いやりなど、人の心が欠かせないからです。 その点、地域連携が盛んな本学には、ボランティアなど人間性を磨く機会が多くあります。例えば日本語を母語としない児童生徒に、日本語指導支援をしている学生がいます。せっかく高校に入学しても授業についていけない外国籍の生徒はいるわけで、学校になじめなくなる前に手を差し伸べる。そうした活動を誇りに思います。 大学にはディプロマ・ポリシーがあり、卒業段階で満たすべき要件があります。ただ人間は、高校、大学といった制度上の区切りで都合良く成長するわけではありません。まして大学を卒業すれば完成するわけもなく、その人なりの曲線を描きながら生涯成長し続けるわけです。卒業時の質の保証は大事ですが、より大切なのは「ここから先、自分はどう生きていくか」を考える力をもつこと。歯学部や保健医療学部の学生も同じで、免許の取得以上に、どんな歯科医師や歯科衛生士になりたいか考えることの方が大切。その出発点が初年次の基礎教育なのです。性や大学で学ぶ意義を理解し、夢の実現に向けたロードマップをつくってもらうことを目的としました。私も初回の授業で教壇に立ち、学長としての思いを学生に直接伝えてきました。特に、建学の精神である社会性・創造性・合理性を羅針盤として人生を考えてほしいこと、大学を利用してほしいことなどです。2年前からは5つの学部の学生を混在させ、少人数のグループごとに「自分はなぜこの学部を選び、何を学び、これから先、何をしたいのか」などをテーマにディスカッションもしています。加えて「データリテラシー」という枠組みのなかで、数理・推論スキルや情報リテラシーなども初年次全員に身につけてもらうようにしています。デジタル492022 APR. Vol.442

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