502022 APR. Vol.442 流行・文化発信基地である渋谷に位置し、創立から100年以上という伝統をもつ東京都立第一商業高校。この5年間の学校改革により、資格取得・検定合格に重点を置く従来型の商業高校から、ビジネスの視点で地域の課題解決に貢献する人材を育成する〝ビジネスハイスクール〞へと生まれ変わりつつある。 当初より改革に携わってきた商業科・藍澤卓也先生は、「背景には、新しい学習指導要領への移行をにらんだ、都立商業高校全体の改革の動きがあった」と振り返る。東京都教育委員会は2017年、ビジネスを取り巻く環境変化のなかで経済社会の発展を担う職業人を輩出していくため、商業高校改革を打ち出した。これを受けて同校は、18年度、「ビジネスを考え、動かし、変えていくことができる力」の養成を掲げ、商業科をビジネス科に改編(図1)。知識や技能の習得にとどまらず、それらを活用して新しいビジネスの提案や価値の創造をする力も備えた人材の育成を目指す、新しいカリキュラム改革にも学年進行で取り組んできた。 改革の目玉となったのは、3つの商業科目だ。1学年の「ビジネス基礎」では、都が作成した補助教材「東京のビジネス」を使用し、企業との連携によるビジネスについての調査・研究を導入。2学年には新たに学校設定科目「ビジネスアイデア」を創設し、生徒が地域の課題発見からビジネスを考える探究学習を行う。そして3学年の「課題研究」へとつなげ、一貫してビジネスを実地に学んでいくというものだ(図2)。 都の方針で動き出した改革だが、生徒の力の伸ばし方に課題感のあった同校教員にとっては、チャンスでもあった。 「本校の生徒は言われたことを一生懸命やる力はありますが、テストで良い点を取ることがゴールだと考えがちです。従来の授業の枠組みにとらわれずに新しい授業をすることによって、その先にあるものに目を向けるきっかけにしたいと考えました」(藍澤先生) では、3つの商業科目では、どのような実践を行っているのか。「調べる力・まとめる力・伝える力」の基礎を作ることを目標とする、1学年の「ビジネス基礎」から見ていきたい。 従来の「ビジネス基礎」との最大の違いは、実際にビジネスを動かしている人や現場に触れる機会の豊富さだ。前半には、生徒が話を聞きたい企業・人への「働く人にインタビュー」を実施。慶應義塾大学の研究室と連携して大学生を相手にインタビューの練習を行い、本番に臨む。後半、各クラス2人のゲスト講師を招き、「好きを仕事にすることの面白さを知る」をテーマに話を聞き、交流を行う。これまで大学生経営者や昆虫食の第一人資格・検定から、課題解決に軸足を移した商業科目の導入NPOとの協働から学ぶ学校にない発想や手法で実践取材・文/藤崎雅子ビジネス教育 商業高校の課題探究活動 NPO法人の伴走 企業連携外部講師からの学び 渋谷に学ぶ 教科横断第一商業高校は2018年度より地域探究を導入し、これからのビジネスに役立つ力の育成を図っています。同校の新しい授業のつくり方や、実現可能性を追求するプログラム設計の工夫などは、学科を問わず、探究活動に取り組む学校のヒントになりそうです。
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