キャリアガイダンスVol.442
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522022 APR. Vol.442助かるのか、という視点も入れて考えさせるようにしています」(2学年担任・野﨑明男先生) アイデアを具体化していくプロセスでは、生徒自身が行うアンケート調査や観察、実験などから得る一次情報を基に、スケッチや模型、動画など自由な方法でプロトタイプを作成(試作)する。例えば、カフェの例では紙粘土で店舗の模型を製作する。それをもって関連する企業や自治体などから意見を聞き、プランのブラッシュアップを重ねていく。 また、より実現性のあるビジネスプランにするため、さまざまなフレームワークを活用している。例えば、あるべき理想の姿と現状の間にあるギャップを可視化するためには「As is/To be」のフレームを使用。活動の振り返りでは、同校が独自に開発した「YWMD」というフレームを使って「やったこと(Y)・わかったこと(W)・学んだこと(M)・だから次にやりた提示される「渋谷に10代が来るためのビジネスアイデア」といった課題について考え、その経験を活かして、2学期は自ら課題発見から行いビジネスプランを作成する「マイプロジェクト」にグループで取り組むというものだ。 マイプロジェクトの特徴は、「実現性がなければ課題解決はできない」(藍澤先生)と、アイデアの実現性を追求する点にある。商業科の知識・技術も活用しながら収益性についても考え、持続可能なビジネスとしての成立を目指す。例えばカフェを設置するアイデアの場合、実際に開店・運営することを目標とし、置きたい什器の価格を調べて初期費用を見積もったり、運営にかかる人件費の計算を行ったりもする。ただし、収益を上げることだけを焦点にはしていない。 「成功するビジネスというのは、収益が上がるだけでなく、誰かの助けになっているもの。そのアイデアでどんな人がどういこと(D)」を書き出すことで経験を概念化し、再現性のある知識・ノウハウへの変換を図る。教員はこうしたフレームの使い方の指導はするが、どう活用し深めるかはグループ活動にかかっている。 「授業中、私は生徒の〝上司〞という設定にしています。グループ活動を見て回り、『従業員の給料はいくらで何人雇うの?』『その費用はどう捻出するの?』『この金額の根拠は?』など質問し、『私(上司)を納得させるプランを作ってね』と。細かいやりとりを通じて、説得力のあるプランはどういうものかを学んでもらえたらと思います」(2学年担任・吉田 葵先生) こうして数カ月かけて進化させたプランは、最終的に「実現困難」という結論に至るケースもある。例えば、渋谷に足湯を作る案は、最後に商店街の団体にプレゼンしたとき、法律による規制のため実現が難しいことが判明した。 「そこが机上ではなく現実から学ぶ面白さです。実現させることが目的ではないので、実現させるにはさまざまな知識が必要だということに気づき、新たな分野に興味関心が広がるきっかけになればいいと思います」(藍澤先生) 3学年の「課題研究」は、こうした2年間の学びをベースに、「コンビニスイーツはなぜ売れるのか」「イマドキ高校生のトレンド分析」など各グループが自由に設定するテーマで取り組み、活動内容を論文としてまとめる。 「なるべく生徒がやりたいことを自由にさせています。そのほうが、高校生の感性を活かしたり、新しいツールを使ったりして、面白い取組になるからです。教員が『そんな方法もあるのか』と驚くなど、生徒の発想や活動から学ぶことも少なくありません」(藍澤先生) 一連の新しい商業科目の導入後、生徒にさまざまな変化が見られるという。入学時は自分に自信がもてず、挑戦を諦めがちだった生徒が、探究活動のなかで「やればできる」という感覚をつかむ例も少なくない。 「無理だと思っていた大企業へのインタビュー依頼でも、やってみたらできたという成功経験をしたり、周囲の成功例を探究の自由度を高め生徒の感性を最大限に活かす何のための勉強かに気づき将来に向けて行動する生徒もアイデアについて経営者などにプレゼンし、意見をもらって改善していく。3学年「課題研究」では、先行研究や調査を踏まえた論文の執筆を学ぶ。「ビジネスアイデア」では、販売実習などを行いプランを立案することも。「ビジネスアイデア」企画書に収支計画を記入。「As is/To be」のフレームを使ったワークシート。同校独自の「YWMD」のワークシート。

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