キャリアガイダンスVol.442
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学年科目渋谷学の取り入れ方1学年英語コミュニケーションⅠ渋谷の魅力をどのように英語で伝えるかをグループで話し合い、発表するなど。数学Ⅰ渋谷に関するデータを用いて、データを表やグラフにまとめる方法を学ぶ。渋谷に関する表やグラフから渋谷の変化について考える。2学年歴史総合渋谷区制定~現代までの歴史を「人と資本の移動」「高度情報通信」に着目しながら学び、冷戦期以降の社会情勢と比較し影響について考察する。保健渋谷区で取り組まれている保健サービスについて学び、公的サービスを通じて生涯の各段階に応じた健康課題を見つけて解決策を検討。新聞を作成し発表。3学年文学国語渋谷を拠点とした作家について調べる。今の渋谷を舞台とした短歌を作り、渋谷の写真とともに発表するなど。生物基礎現在と過去の渋谷川の生態系について調べる。渋谷川復活における課題を発見し、解決策を考え発表。532022 APR. Vol.442目にしたりし、挑戦のハードルが下がってきました」(武田先生) 学びに対する意識も変わりつつある。「勉強と実社会は別物として線引きし、『勉強は嫌い』と苦手意識をもつ生徒は多いと思います。しかし、『ビジネスアイデア』で生活の気づきからビジネスを考えるなかで、自然と『なぜ?』という知的探究心をもち、その解決に商業科の知識や技術などが役立つ経験をすることで、何のための勉強か、社会とのつながりで考える生徒も出始めています」(吉田先生) また、将来の目標設定や、その実現に向けた行動の変化も見られるという。 「実社会との接点が大幅に増え、『こういうところで働きたい』『自分たちもこんな社会人になりたい』という生徒の発言をよく聞くようになりました。社会に出てどう働くかをイメージできるようになってきたのではないでしょうか」(野﨑先生) 「魅力的な社会人と出会って『こういう大人になりたい』と思うだけでなく、そのための方法を自分で考えたり調べたりする行動力がついてきたように感じます」(吉田先生) 新しい授業の実践は、教員が自らの固定観念を破る機会でもあった。 「以前は資格や検定に合格させなければならないという使命感から、板書中心の授業で生徒に知識を教え込んでいましたが、最近は生徒自身が調べたりまとめたりする時間を多く設けるようにしています。当初、資格・検定の合格率が低下する懸念もありましたが、実際は合格率が上がったものもあります。生徒が自ら学ぶ力こそ大切なのだと気づかされました」(野﨑先生) 22年度からは、ビジネス科目だけでなくすべての教科において、「渋谷学」(*1)と銘打った新たな取組が始まる(図3)。各科目の視点から渋谷という地域を見つめて課題解決を考える、探究的な授業をそれぞれ少なくとも1単元実施することで、教科横断的に目指す生徒の育成に取り組んでいく計画だ。 各教員は学校周辺にあるものをどのように教材として扱うかに知恵を絞る。例えば国語科では渋谷ゆかりの文豪の作品、また数学科では三角関数を活かした渋谷の地形の測量技術などに注目している。「教科書だけでなく、地域の素材を取り入れようとすることで、学校が活気づいてきた」と副校長・岩崎 豊先生。こうした教員全体の新たな取組によって、生徒のさらなる成長が期待される。 「高校生は大人も驚くようなことができる、大きな可能性をもっています。それを潰すことなく、素直に『やりたい』『面白い』と思うことをやれるようにしていきたいと思います。本校の生徒は、もっと枠を越えられるし、まだまだ伸びる。だから、これからも授業をアップデートさせ続けていきます」(藍澤先生)全教科で「渋谷学」に取り組み生徒を存分に伸ばしたい課題を多角的に見て掘り下げる力がついた「ビジネスアイデア」の授業で、「子育てしやすい渋谷」をテーマに取り組んだグループの4人にインタビューしました。Q.どんなふうにアイデアを考えていきましたか?「スーパーマーケットでアルバイトをしているとき、お子さんを連れたお母さんが大変そうにしているのを見て、お母さんたちの助けになることをしたいと考えたのが始まりです。学校でお子さんのいる先生方にも話を聞いたところ、『自分の時間が欲しい』という意見が多かったので、最初はスーパーの中に託児所を設ける計画を立てました」(宮本さん)「渋谷区役所の子育て支援センターに、子育てについてどんな悩みが多いのか、区はどのような支援をしているのかなども伺い、アイデアの参考にしました」(武田さん)Q.実現を目指して取り組んでみて、いかがでしたか?「似たようなサービスがあるなかで、既存のものとどう差別化するかを考えるのが大変でした」(深山さん)「グループで『なぜこれが必要?』『ほかの案との違いは?』『矛盾していない?』などいろんな角度から話し合い、最終的には、保育園の隣にスーパーの受け取りボックスを設置してお子さんのお迎え時に商品を受け取れる案に変更しました。一度考えたアイデアで良しとするのではなく、掘り下げていくことで、より良い案を生み出すことができたと思います」(内野さん)Q.この活動を通じて学んだこと、自身が成長したと思うところは?「情報を収集して選別したり、自分たちの考えを資料やプレゼンで表現したりする面で成長したと思います」(宮本さん)「以前はある問題に対して理想を考えるだけで終わっていましたが、周りの意見や情報を基にどうやって実現させていくかまで考えられるようになりました」(深山さん)「自分たちの『やりたい』だけでなく、いろんな視点から見て、実現のために必要なことは何かを検討する力がついたと思います」(武田さん)Interview*1 渋谷学とは、渋谷区に立地する國學院大學のさまざまな研究者がチームを組み、 それぞれの学問から渋谷を研究するプロジェクトで、同大の登録商標。※先生・生徒の所属・学年などは取材時のものになります※上記科目以外でも渋谷学を実施写真左から、内野珠しゅや耶さん、宮本 優さん、武田あおいさん、深みやま山愛あいみ海さん。全員2年生。図3 「渋谷学」について各科目の取組の一部(2022年度計画)

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