キャリアガイダンスVol.442
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GeoGebraで作図した教材。立方体の辺上の3つの赤い点を動かすことができ、3点を結んで立方体を切ると、どんな断面になるかも確認できる。2021年のマインクラフトの授業アンケート。数学が苦手でもプログラミングは楽しめている生徒も多く、数学への波及効果を村上先生は期待する。HINT&TIPS1生徒がイメージをつかめるようにICTを使って動きのある教材を作成村上先生はこの10年で、黒板とチョークの授業から、アニメーションのあるスライドや、シミュレーションできるツールを使う授業にシフト。そのねらいは、問題を解くプロセスや、条件を変えたときの図形やグラフの変化を、生徒がより視覚的に捉えられるようにし、イメージが湧くようにすることだった。2いつでも何度でも学び直せるように教材をインターネットにもあげる教材をインターネットにもあげる利点は、生徒が好きなときに何度でも見返せるようになることだ。授業でついぼんやりして、理解できなかったことがあっても、質の高い教材がネットにあがっていれば、本人がわかるまで自分で学び直せる。授業についていけなくなって嫌になる、というケースを減らしていける。3基礎・基本が身につくように同じ問題や似た問題を繰り返す問題演習や小テストでは、以前に学んだものと同じ問題や似た問題を出す。案外、生徒は間違えるもので、理解不足に気づき、復習に向かう。その反復によって学びの定着を図るのだ。反復作業はさほど楽しくないので、「友達と学ぶ環境」や「学び直せる環境」を整え、楽しんで取り組める空気にすることも重要。4生徒が数学を楽しむことができるように教員自らが楽しそうな数学の活動を探る数学にどういうツールを組み合わせると、どんなことができるようになるか。村上先生はその試行錯誤を率先して行っている。GeoGebra、マインクラフトのほか、ポケットサイズのコンピュータmicro:bitや、レゴブロックなど。それらのツールを活用した取組についても、ホームページで随時発信している。 子どものころから数学が好きで、大学や大学院でも数学を専攻した村上先生は、教員になると、自分が親しんできた数学の楽しさを生徒にも伝えようとした。 ところがすぐに壁にぶつかってしまう。 中学生の授業を担当したのだが、当初の村上先生の授業のやり方では「数学が好きな生徒しかついてこなかった」のだ。 「受験数学というか、問題の解き方ばかり教えていました。『こうやって解けると面白いだろう?』という自分の思い込みがあって、恥ずかしい話、数学が苦手な人の気持ちを全然わかっていなかったのです。授業に集中してくれない生徒がいて、悩みに悩んで…解き方の参考書だけでなく、数学教育の本も読むようになりました。そこから模型を作ったり、自由研究をやったり、数学が好きになる工夫を模索していったのです」 とはいえ単発の取組では「その場だけの盛り上がり」で終わる。打開の一歩となったのが、プレゼンテーション用ソフトで作った教材だ。視覚的で動きのあるスライドをパッパッと見せていくと、生徒の食いつきが違ったという。 「そこで気づいたのです。問題の解き方を教えても、数学が苦手な生徒はイメージが湧いていなかったんだ、と。僕自身、大学の数学では、やっていることのイメージがつかめず、苦しんだことがありました。苦手な生徒でもイメージが湧くような教材を作ろう。そう考えるようになってから授業の準備が楽しくなりました」 2017年の教員向け講習で、数学ソフトGeoGebraと巡り合えたのも大きい。 「講習で知ったときは電気が走るぐらい衝撃を受けました。グラフや図形について、条件設定によりどう変化するかを生徒がシミュレーションできるといいな、と思っていたので。『作りたいものがこれでできる』と感じて、寝食を忘れるくらいはまり(笑)、各単元の教材を自作しました」 2019年からは、情報の授業のプログラミング必修化を見越し、自身も未経験だったプログラミングや、マインクラフトのゲームについて、ゼロから勉強を始めた。自分が何につまずき、どう乗り越えたか、学んだことをほかの人とも共有しようと、その過程をブログでも発信。そしてその年の夏から授業に取り入れた。授業ができるまで数学が好きだからぶつかった壁なぜこの面白さが伝わらない?■ 同僚の先生INTERVIEW 村上先生と気が合うのは、担当教科を「好きになってほしい」と思っているところ。そのための手立てとして、学ぶべきことを繰り返し学ぶように促し、基礎・基本の定着を目指されているところです。数学でも英語でも、基礎・基本が身についていないと、「自分は何もできていない」と感じがちです。それではその教科を好きになれないと思うのです。 「教科」と「社会」をつなげようとされている点にも共感します。授業では大学入試にも備えますが、それありきではなく、「社会に出て使うもの」を学んだ結果、受験にも役立つようにしたいね、と話しています。 私が英語の基礎として重視するのは発音。発音とスペル(綴り字)に規則性があることから学ぶと、話す力だけでなく書く力、読む力、聞く力も高めやすいんですよ。社会につながる取組としては、生徒たちが英語の歌を発音にも注意して歌い、撮影し、music videoを作ることなどをしています。生徒も私も「楽しい」と思えることも大事だと感じています。英語杉本智昭先生数学や英語を生徒が好きになるにはどうすればいいかを模索して【設問】数学とプログラミング(回答数169人)■ 数学は好き(得意)で プログラミングも好き…56人(33%)■ 数学は好き(得意)だが プログラミングは嫌い…32人(19%)■ 数学は嫌い(苦手)だが プログラミングは好き…63人(37%)■ 数学は嫌い(苦手)で しかもプログラミングも嫌い…18人(11%)【設問】またマインクラフトを使った授業をやりたいですか(回答数169人)■ やりたい…160人(95%)■ やりたくない…9人(5%)95%33%19%37%11%5%582022 APR. Vol.442

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