キャリアガイダンスVol.442_別冊
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康を支える3つの柱について科学的に学ぶことができました。睡眠の質の重要性など、高校時代まではあまり意識することもなかったですから。また、『スポーツスタディ』『スポーツプログラム』という全学共通の科目で、フラッグフットボールやアダプテッドスポーツ(障がい者や高齢者も楽しめるスポーツ)など未知の競技を経験できたことも勉強になりました」 ゼミでは、3年次に音楽がアスリートのパフォーマンスに与える影響を、4年次に体重減少とアスリートのパフォーマンスの関係を研究。実験では想定外のデータが出てくることも多く、科学的なアプローチの重要性を実感することができたという。 また、髙橋さんは、入学後、女子サッカーチームを体育会に昇格させる取組にも尽力。ここでも学科における多角的な学びが役立った。 「チームの一人ひとりと話し合い、意識を統一させたり、応援してもらえるチームになるための方法を考えたりする際には、授業で学んだことが活かされました。そのほか周囲を動かすときの熱意の大切さ、組織運営や会計に関する知識などもプラスに働きました」 では、4年間の学びを通して髙橋さんが理解した「ウエルネス」とはどのようなものなのだろうか。 「人生に価値を見出し、人生を楽しむことがウエルネスなのだと感じています。それはスポーツに全力で打ち込むことによっても、スポーツを見て楽しむことによっても実現できること。この考え方は社会人になっても活かすことができると信じています」 中学時代から部活動でサッカーに打ち込んできた髙橋七海さんは、大好きなスポーツを軸に、社会・福祉との関わりやマネジメントなどを幅広く学べることに魅力を感じ、スポーツウエルネス学科に進学した。 「入学後の学びは新たな発見ばかりで新鮮でした。例えば『健康の科学』という科目では、運動・休養・栄養という健コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科4年髙橋七海さんを目指しています」 では、研究活動を通して見えてきたものとは何なのだろうか。 「日本では、スポーツは『極めるもの』であり、試合での勝利や記録の更新を目指しながら、最後までやり遂げることが美徳とされているような印象です。組織には厳しい上下関係や根性論といった独特の『ジャパニーズ・マインド』が浸透していて、教育や人間力の形成といった側面も併せもっています。一方で、ヨーロッパではスポーツはあくまで楽しむものであり、それぞれが自分のスタイルでスポーツに取り組んでいます」 このような違いから、例えばヨーロッパのアスリートは現役時代から競技以外の分野にも興味関心をもち、セカンドキャリアも多様であるのに対し、日本のアスリートのセカンドキャリアは画一的になりやすいという。このような国際比較の観点から、現在はスポーツ組織のガバナンスを研究するライトナー准教授は、日本の学生にこんなメッセージを贈る。 「日本は周囲の動きに合わせようとする学生が多い印象を受けますが、もっと自由にいろいろなことに挑戦してほしいですね。私の役割はそのために、日本人にはない『外の視点』を伝えることだと思っています」 オーストリアの元女子柔道代表選手であり、立教大学では海外のスポーツ文化やスポーツマネジメントに関する科目を担当するライトナー・カトリンJ.准教授は、自身の経験を踏まえ、アスリートのセカンドキャリアをはじめとするスポーツの組織・制度に関する研究に取り組んでいる。 「日本社会や日本特有の価値観の上に築かれたスポーツ文化・組織・制度の特性をあぶり出し、社会学的思考によって分析しています。加えて、日本に対してヨーロッパはどうなっているのか、両者の違いや共通点はどこにあるのかといった国際比較を通して、スポーツを取り巻く環境を一層充実させることコミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科ライトナー・カトリンJ.准教授7Vol.442 別冊特集

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