が機能するには普段から、教育現場で何が起きているかを調査(見える化)し続ける努力が欠かせません。ディプロマ・ポリシーとして掲げた資質・能力が本当の意味で身についたかは、長い時間をかけないとわからないからです。立教大学経営学部では2018年にデータアナリティクスラボという組織を立ち上げ、卒業後を含む学生のさまざまなデータを収集・分析して教育効果の見える化を図り、授業改善に活かしています。ただ、当然リソースが必要であり、どこでもできる取組ではありません。これまた仕組みの問題です。―厳しいご指摘が続きました。一方、スクール・ポリシーを皆でつくることのプラス面として「校内で発言がしやすくなった。会話が増えた。方向性が揃ってきた」などの声も聞かれます。【中原】ただでさえお忙しい高校の先生方にいろいろなことを期待するのは酷ですが、確かに校内外に対話を増やす機会だとは思います。それによって「うちの学年は昨年と比べて変わったね」「今度の授業どうする?」みたいな何気ない会話が生まれるところからがスタートです。いずれにしろ、大切なのは掲げてなんぼではなく、届いてなんぼ。生徒にいい影響があることが大事です。ればなりません。―PART1も含め、学校で応用できるヒントがあるように感じています。ただ、トップの覚悟という点では、公立高校では校長の異動年限が短い。【中原】そこが問題なんです。組織文化論で扱うタイムスパンは年単位。5年から10年が普通です。せっかく「難関国立大学に何人合格したか」という呪縛から自由になり、「こんな生徒を育てたい。そのためには」、という独自の光景を描こうというのに、トップが3年で異動しては、長期のビジョンが描きにくい。現場だって、ビジョンが浸透する前に校長が代わったら、「また一からか」となってしまいますよ。どうせ、次の校長だって、また新しいビジョンを勝手に描くんだろ、とね。【中川】私は教育の専門家ではないので無責任なことは言えません。ただ、今の話を聞く限り同感です。偏差値というのは、僕らでいう営業利益にも似た圧倒的な尺度。それとは違う学校独自のモノサシを当てたいわけですよね。だとすると、何度も繰り返しますがトップの覚悟が絶対に必要。時間や裁量もないなかでは難しいけれど、ビジョンの達成なんて長いスパンの話。結局はコツコツやるしかないんです。【中原】大学も三つのポリシーの策定・公表が義務づけられていますが、それ【中川】就活でいろいろな学生に接しますが、特定の匂いを感じさせる大学は確かにあります。ある一定のポリシーの下で数年間を過ごすと、独特の匂いがたつんですよね。今のは大学の話ですが、奈良を拠点にビジネスをしている私の耳にも、これまでにないタイプの学校が日本のあちこちで生まれている話題は入ってきます。そうした学校には、「こんな若者を育てたい」という明確なビジョンがあるだけではなく、そこに向かうための具体的な道筋、つまり日々の実践にきちんとブレイクダウンされた綿密なカリキュラムが設計されています。そして、そのような取組に魅力を感じた生徒や保護者、教職員や関係者が集まってくるわけですよね。他にも、そうした志ある教育者や、特色をもつ学校が私立公立問わず各地で生まれているのだとすれば、そんな場所から日本の学校は変わっていくのだと思います。172022 JUL. Vol.443“言語化”して「みんなのもの」にするということ。
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