キャリアガイダンスVol.443
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―SMやSPの言葉を考えるための情報収集はどう進めたのでしょう。開校から10年以上経つ今も、当初の理念が色あせていないので、SMやSPを「理念を再確認し、目線を合わせるもの」と捉え、創立前の市教委の基本構想、開校の理念、本校の教育目標などを参考にしました。学校の教育目標を踏まえつつ、今後の商業教育の方向性を尋ねた教員アンケートを実施し、生徒や保護者、地域の意向も汲むために、既存の学校評価アンケートも活用しました。新学科のポリシーに関して言えば、各教員で手分けして理数系の探究に力を入れる高校や大学を視察することから始めました。そのなかで方向性を見定めていった感じです。―校内での検討段階では、どのようなやり取りがあったのでしょうか。管理職からたたき台を提示したため、先生たちが意見を言いづらい面もあると思い、先生方の率直な意見をあげてほしい、と企画運営委員会を通じて伝えていました。SPの検討ではこんな意見がありました。資質・能力を定めるGPは「生徒に目指してほしい力」として打ち出そう、と。「身につける力」とすると、「つけないと駄目なもの」と捉え、その力がなかなか高まらないと生徒をネガティブに見てしまう。そうではなくポジティブに、生徒が「目指す」というがんばる過程や気持ちを大事にする学校でありたい、と。「本校の設立理念を見つめ直すいい機会になった」という声もありました。本校には商業の専門教科を担当する教員と、一般教科を担当する教員がいます。私自身はまだまだ商業教員として未熟ですが、その多様な先生方と一緒に「商業教育だからできること」を発見していけたら、と思っていたんです。ですので、この学校の特色を改めて皆と情報共有しながら検討することを目指しました。例えば本校はこれまでにスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール指定の取組で、マネジメント能力を身につけた職業人の育成を図ってきました。そのねらいや成果を資料にまとめ、職員会議で先生方と共有し、今までの教育活動も振り返りながら、SMやSPについて話し合ったのです。実は新学科の「育成したい力」や「育てたい生徒像」の言葉をまとめるのに、1年近くもかかったんです。失敗も含めて生徒に任せて自主性を伸ばすのが伝統だ。進学を期待された学校であり、進学重視から逸脱すべきじゃない。行政や学術研究の中心になれる生徒を育てたい…。各先生からたくさんの思いが出てきたためです。ただ、何度も議論して言葉をまとめたことで、カリキュラムを作る段階ではその方針に沿って皆で進めることができ、今思えば必要な時間だったように感じています。SMの協議で教育委員会からお願いしたことは、文言の最後を「学びの場」で統一することでした。自分たちの学校をどんな学びの場にしたいのか。根本を議論することで、先生方が自身を振り返ることができ、同じ方向も目指しやすくなった、というその作る過程そのものに、大きな意義があったと感じています。札幌旭丘高校数理データサイエンス科のスクール・ポリシーの策定プロセス● 中学生やその保護者に対するGPやAPを踏まえた入試広報● SPに基づくルーブリックの作成● 理数系の高校や大学を視察● 検討チームで、新学科における「育成したい力」を議論→職員会議でさらに議論●職員会議でSP確定●新学科検討チーム発足札幌旭丘高校数理データサイエンス科のAPAPの前提として定めた「目指す生徒像」では、科学者・技術者を志す、先端IT人材を志す、次世代リーダーを志す、という3つを掲げている。● SMとSPの策定開始→新学科におけるAPの策定などは、新学科検討チームが中核に知的好奇心にあふれ、科学への関心が高く、将来にわたり探究し続けることを目指す生徒理数分野を中心とした幅広い教養と情報活用能力を身に付け、札幌や世界の諸課題に取り組もうとする生徒未知の分野に果敢に挑戦する気概をもち、仲間とともに未来志向の議論や発信をする意欲を有する生徒202022 JUL. Vol.443

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