「恐竜のまち」として知られる福井県勝山市にある勝山高校。少子化や福井市内の高校への生徒流出により、近年は定員割れが続いてきた。なんとか地域の高校を存続させようという気運が高まるなか、生徒の地域課題探究(総合的な学習の時間)を通して市役所など地域とのつながりも強まっていた。 そうしたなか、2023年度に予定されていた新学科(探究特進科)の開設を1年前倒しにすることが、県の方針で決定。2021年3月に同校に通知があり、校長、教頭、教員3名による探究科準備委員会(以下、準備委員会)が設置された。メンバーの一人だった前田英えいめい明先生は、「開設準備には通常2年はかけるので、最初は困惑した」と振り返る。 県への新教育課程の提出期限は7月。「カリキュラムを作るためにはカリキュラム・ポリシー(CP)が必要。そのためにはグラデュエーション・ポリシー(GP)を策定して育てたい生徒像を明確にする必要がある…ということで、早急にGPを作ることになった」と、同じく準備委員会のメンバーだった堂森峰春先生は、スクール・ポリシー策定に着手した経緯を説明する。 GP策定に際しては、校内外の関係者や有識者からなる「勝山高校探究科新設プロジェクト会議」(以下、プロジェクト会議)を結成。準備委員会のメンバー5名に加え、勝山市教育委員会から小中学校の教員を含めて4名、勝山市役所の職員4名、民間企業から2名と、多様なメンバーが集った。地域との意識の共有や連携が進んでいた同校にとっては、「ごく自然な流れだった」と、前田先生は言う。 プロジェクト会議では、「勝山ってどんなところ?」と歴史や特色を振り返るところからスタート。「勝山にはどのような人財が必要か、育成したいか」について意見を出し合い、「勝山高校で育てたい生徒像」に落とし込んでいった。 4〜5月にかけて4回会議を行い、5月半ばには普通科・探究特進科共通のGPを策定。「ものごとに常に問いを向け、本質を見極める力」(思考力・判断力・表現力)など9つの力としてまとめ、学力の3要素に紐づけた。 こうして策定されたGPに基づき、CPは準備委員会を中心に検討・策定していった。普通科・探究特進科共通のCPは3項目からなり、「生徒の興味関心に応じた学びの時間を確保するため、週あたりの授業時数を31単位とする」ことを明記。加えて探究特進科では、1年次に総合的な探究の時間を3単位設定すること、学校設定科目「LABO」を2年次に3単位、3年次に2単位設定することが示された。 「福井県は他県に比べて単位数が多く、本校も昨年度までは35単位でした。教え込む教育から引き出す教育に転換しよう、生徒に時間を返そうというのが県の方針で、本校では思い切って31単位まで削減しました」(前田先生) CPに基づき準備委員会が教育課程の原案を作成。さらに各教科の主任らからなるカリキュラム委員会が、教科・科目ごとの単位数について検討・調整した。「31単位に減らすことに対しては、さまざまな意見があった」と前田先生。また、「社会科の教諭としての立場からすると、時数が足りずに苦しいのが本音」と堂森先生。それでも、CPカリキュラム作成にはGPの策定が不可欠校内外の多様なメンバーによるプロジェクト会議でGPを策定GP実現のためのCPを策定。GPを教科の学びに紐づける取材・文/笹原風花勝山高校のスクール・ポリシーの策定プロセス● 探究科新設プロジェクト会議発足[管理職・教員・市役所、市教委、民間有識者]● 4回の会議でGP検討→「9つの力」決定● GPとカリキュラムの紐づけ[教科]● 教職員向け研修会[全員]● GP/CPから県がスクール・ミッションを作成● CPを検討・策定● GPルーブリック策定[探究科準備委員会]● 学校目標をなくし、スクール・ポリシーに一本化● APの作成[教務]●学校と地域の課題共有●探究科準備委員会設置222022 JUL. Vol.443
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