に定めた31単位を変えることはなく、7月には県に新教育課程を提出した。 CPならびにカリキュラムの作成と並行して、各教科主任からなる教科会のメンバーが集まり、GPと教科・科目の学びとを紐づける作業が行われた。卒業時までに身につける力としてGPに示した9つの力を、学年ごとに身につける力に細分した「共通して育みたい人物像のGPルーブリック」を作成。それぞれをどの教科・科目を通して重点的に身につけるかについて、付箋を使いながら考察し、明確化していった。 教職員に向けては、4月と5月に新学科設置についての研修を実施。6月末には全教職員にGP・CPを発表・共有したが、「一部の教員が考案したものという感じで、当時はまだ輪が全然広がっていなかった」と堂森先生。秋以降は、教科会で示されたGPルーブリックに基づき、教科・科目ごとに新カリキュラムについて考察を重ねていった。「GPについては、急に降りてきた感じがして、最初はピンとこなかった」と英語科の前川真奈美先生。しかし、年間の学習計画を作成するプロセスを通して、「GPがないと作れない、と重要性を実感した。同時に、教員が自分ごととして捉えるためにも、〝なぜ〞というコンセプトを固めることに教員がもっと参加すべきだと感じた」と言う。 新たに始まる探究の授業(総合的な探究の時間、LABO)については、9月にワーキンググループが発足。GPに照らし合わせながら、3年間を通した学びを設計していった。ワーキンググループのメンバーでもあった前川先生は、「GPの9つの力は多いように思えるかもしれないが、9つあることには意味がある」と言う。「いろんな生徒がいて、得意・不得意もそれぞれなので、GPの示す内容が限定的だと、劣等感や自信喪失につながりかねないと思うんです。9つあるうち1つでも、身についたな、伸びたなと思える力があれば、自分のできているところに目を向けることができる。これはとても大事なことだと思います」(前川先生) なお、福井県では各校が策定したGP・CPを基にスクール・ミッションを策定しており、勝山高校にも2021年末に提示された。GP・CPから編まれたミッションのため、「すんなりと受け入れられた」と前田先生は言う。 今年度からは、従来の学校目標はなくし、スクール・ミッション、スクール・ポリシーに一本化した勝山高校。各教科・科目のカリキュラム考案や授業実践を通して、教職員の間にも徐々に浸透している。また、GPをわかりやすく言い換えた「4つのシンカ(進化・新化・伸化・深化)」(探究特進科では「真価」も加えた5つ)を学校のコンセプトとして提示し、生徒や同校を志望する中学生にも発信してきた。 しかし、課題もあると前田先生は言う。「GP・CPも4つのシンカも、言葉としてはみんなが知っているものになりつつありますが、それを普段から意識したり実際の教育活動につなげるという部分については、まだ不十分だと感じています」 また、堂森先生も、策定のプロセスにおける反省点を含めてこう話す。「とにかく時間がなく、GP・CPとも言葉を吟味しきれていないという自覚があります。この言葉、表現でいいのか、意味がわかりにくいんじゃないかという意見も挙がっています。いかに〝みんなのもの〞にしていくかというのが、まさに本校の課題。プロジェクト会議でやったような意見の発散、共有といった〝作る〞プロセスを、教員間でもっと一緒にできたらよかったなと思います」 同校では、現在、教務部を中心にアドミッション・ポリシー(AP)の策定を進めている。前田先生は、「APの策定と並行して、作ったポリシーをいかに運用していくか、今後も試行錯誤を続けたい」と締めくくった。GPに照合しながら、年間カリキュラムを作成ポリシーは作って終わりじゃない。「知っている」の次のステップへ(左から)教務部・第1学年主任の前田英明先生、探究企画部・1年探究特進科担任の前川真奈美先生、探究企画部長の堂森峰春先生。1948年創立/普通科・探究特進科/生徒数315人(男子144人・女子171人)/2022年度に探究特進科を開設。初年度は定員を上回る数の志願者を集め、普通科の定員充足率も向上した。学校データ勝山高校探究科新設プロジェクト会議の様子。グループディスカッションは、組織を越えて混ざり合うよう配慮され行われた。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.443)※「共通して育みたい人物像のGPルーブリック」のみもダウンロード可自身が進む道を決める(進路決定・キャリアデザイン)自身の価値観・個性を深掘りし、振り返る(価値観・個性)探究を通じて、学力以外の武器(強み・専門性)を育み真価を発揮する。学校推薦・総合型選抜と一般選抜の二刀流新たな技・知恵を取り入れる(テクノロジー・理論)自身が決めた方向性に伸びていく(主体的な学び)「教科を通じて何を学ぶのか」を明確にすることで、各教科の教育目標や内容の設定の方針となっている。●GPルーブリックと教科・科目の対応●勝山高校のSMとコンセプト勝山市との協力や中高連携教育、産学官と連携したSDGsや学問的な関心に基づく探究的な学びを通して、自己の未来をデザインする力、本質を見極める力、他者と協働する力を育成し、生徒や保護者が希望する進路を実現する。232022 JUL. Vol.443スクール・ポリシーをみんなのものにする高校事例
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