キャリアガイダンスVol.443
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でも生徒や卒業生からは『グローバル』『通用する』『能力』など、多様な社会での活躍を見据えた言葉が多かったのが予想を超えていました」(木戸先生) 生徒や卒業生の声を踏まえ、教職員にもアンケートを依頼したが、任意としたため回答率が2割にも満たなかった。多忙を極める教職員の意見をどうしたら聞くことができるか。策定委員会の先生たちは考えた末、全員参加の研修会を設定することとした。 2021年11月に実施されたスクール・ポリシー策定のための研修会では、テキストマイニングした生徒や卒業生の声を基に、安房高で育てたい生徒像、生徒に身につけてもらいたい資質・能力について討議。若手も意見を出しやすいよう、世代別のグループに分かれてディスカッションを行った。出てきたキーワードを集め、それらをさらにテキストマイニングしていった。 学校関係者たちから集まった声を、SPとしてどのような表現に集約させていくかが、最も難しい作業だった。「改めてSPの位置づけとは何なのかを考えました。SPは、すべての教育活動を検討する際の基準であり、また、仕事の優先順位をつけるうえでもよりどころとなる憲法であると、校長とも確認しました」(木戸先生) ただし、全教科、全学校活動のよりどころとなり得る言葉に落とすには、抽象的、一般的な表現になりがちなことが策定委員の先生たちの壁となった。国語科の先生にも協力を仰ぎ、表現を練った。 表現よりも、策定過程でさまざまな声を吸い上げたこと、そこで悩みながら練り上げたことが大事だという共通認識の下、「育てたい生徒像」として「知的好奇心をもち、主体的に学び、考え、行動する生徒」を軸とするSPを決定した。外せなかったのは「知的好奇心」。生徒が成長していくうえで、自ら前に進む原動力となる資質であるからだ。各授業でも知的好奇心を刺激することを意識してほしいという思いが込められている。 グラデュエーション・ポリシー(GP)は、校訓である「質実剛健・文武両道」を現在の状況に置き換えた「学びの徒としての謙虚な姿勢」「礼節を重んじ他者を尊重する精神」「リーダーとして求められる人間力」と定めた。カリキュラム・ポリシーの中に「安房の子は安房で育てる」という文言を組み込んだところに、地域からの期待に応えるプライドが表れて見える。 安房高校のSPはこの3月末にできあがったばかり。しかし、策定する過程で委員会の議事録を毎回配付していたことで、「SPって面白そう」と興味をもつ教職員が出たり、SPについて職員室で会話が増えるなど、意見を言い合える風土ができてきた。 さらに、全員参加の研修会で育てたい生徒像を話し合った経験から、「思考力を育てるにはどうする?」など、教科ごとに授業づくりについて相談し合う姿も増えてきている。「やる気が強い教員集団であるほど、それぞれが向く方向がバラバラになりがちです。SPは『安房高校の教員としてできること、すべきこと』という同じ方向を向くための道標となると期待しています」(渡邉嘉三教頭)(左から)元スクール・ポリシー策定委員会委員長 木戸一平先生、校長 石井浩己先生、教頭 渡邉嘉三先生地域、生徒、卒業生からの声を基に、教職員が考える育てたい生徒像や資質・能力を討議。世代別のグループで若手も積極的に発言できた。生徒アンケートのテキストマイニングをスクリーンに投影して共有。ワードクラウド形式は、多かった言葉が大きな文字で表れ、生徒の気持ちが伝わりやすい。生徒の自由記述をテキストマインニングしたもの。「できる」「能力」「社会」「行動」「英検2級」など、生徒たちからは将来を見据えて身につけたいキーワードが目立っていた。1901年創立/普通科(単位制)/生徒数707名(男子358名、女子349名)、創立120年を超える伝統をもち、千葉県で最初の「教員基礎コース」が設置され、卒業生の多くが県内外で教職に就いている。学校データ教員の声を吸い上げるため全員参加の研修会を実施SPを考える過程で、教員同士の意見交換の風土が教員が迷ったときによりどころとなる憲法がSP●生徒アンケート 「卒業するときにもっていたい資質・能力」●全教職員が参加した研修●安房高校のSP〈育てたい生徒像〉知的好奇心をもち、主体的に学び、考え、行動する生徒〈GP〉•学びの徒としての謙虚な姿勢•礼節を重んじ他者を尊重する精神•リーダーとして求められる人間力252022 JUL. Vol.443スクール・ポリシーをみんなのものにする高校事例

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