キャリアガイダンスVol.443
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しいという思いが込められています」(山田雄太先生) 2019年度末に、「荒野をひらく探究人」という独自の「スクール・ポリシー」をベースに、「自分を啓く」「自ら拓く」「ともに拓く」を育成したい生徒像として具体化。その後に文部科学省からグラデュエーション・ポリシー(GP)、カリキュラム・ポリシー(CP)、アドミッション・ポリシー(AP)の3つのポリシーを含んだSPの策定が義務づけられたことから、この方針の下で「荒野をひらく探究人」はGPとして位置づけられた。 GPで育成したい人物像を策定した後、2021年度内にそれを実現するためのCPおよび、APを策定していった。CPは「『社会に開かれた教育課程』による『探究人』の育成」とし、5項目の具体策を設定。「新カリキュラムの中心は生徒たちが自らテーマを設定する総合的な探究の時間ですが、それだけでなく、どんな教科・科目でも必ず探究的な学びとなるよう先生方にお願いしています」(鈴木健校長)「授業アンケート(※)で、SPと関連した達成度を測り、授業改善に結びつけてもらう取組もしています。例えば『自ら拓く』に関連して、『本時の授業で、主体的に授業に取り組むことができたか』と尋ねるなどです。理想は意識しなくても自然にSPに則った授業や学校活動になっていくことです」(髙木先生)「荒野をひらく探究人」を策定した直後にコロナ禍に見舞われ、「まさに荒野を切り拓いて来た」と先生たちは語る。「当時、初めてオンライン授業などをするときに、先生たちのよりどころとなったのがSPでした。また、生徒たちは秋の文化祭を実現しようと、一斉休業中でも自分たちでガイドラインをつくるなど、主体性に磨きがかかったと感じました」(山田先生) また、2021年度には生徒中心の「制服検討委員会」という校長の諮問機関をつくり、生徒たちが多様な観点から制服のあり方について検討。校則を変える仕組みを見える化していった。「筋道を通して練り上げた意見は学校に取り上げてもらえるということを生徒たちが体感しました。学校側は生徒の発言権、決定権を認める。これこそが主権者教育で、校則は生きた教材となりました」(髙木先生) SPがカリキュラムだけでなく、生徒指導を含めた学校活動全体の道標となっている岐阜北高校。学校の活性化は確実に進んでいるようだ。1941年創立/普通科(単位制)/生徒数1078名(男子504名、女子574名)、 岐阜市立の3つの高校が県立移管によって誕生した伝統校。県の「グローカル探究実践事業」指定校SPが授業だけでなく校則改訂など全学校活動に波及「スクール・ポリシー」の策定に関わることには期待しかなかった 2年生のときに北高活性化プロジェクトに参加しました。もともと生徒会活動は活発でしたが、生徒が主体性を発揮できるのは文化祭や体育祭などのイベントのみ。生徒会のなかでは「もっといろんなことに関わりたいよね」といつも話していて、校則のことなど学校運営に関わってみたいと思いつつ、先生たちとは授業以外で話す機会はあまりありませんでした。 だから、先生たちから「がやがや会議」をもちかけられたときは期待しかなかったです。「やっと自分たちの声を学校に反映させられる!」と思いました。会議後に「スクール・ポリシー」をつくっていく過程も、私たち生徒が提案した案がどんな形になっていくのか、ワクワクしながら見ていました。先生たちが学校を変えるために考えてくれていることが嬉しかったです。 私が学校の運営に関わりたいと思ったのは、学校や先生たちからたくさんのものを与えられていると感じながらも、それが当たり前で疑問をもってこなかったからです。その状態で社会に出たときに自分でやっていけるのか不安もありました。だから高校生のうちに自分たち主導でものごとを決めたり行動してみたかった。そういう気持ちを先生方に知ってもらえる場がこのプロジェクトだったのです。 策定後も「荒野をひらく探究人」を使命感として意識したわけではありませんが、「スクール・ポリシー」策定に参加したことで、自由になれた気がします。実際にその直後に、生徒会で校則を変える取組ができました。私たちができたことは一部でしたが、むしろ後輩たちがもっと校則について活発に議論していて、私たちのころよりも主体性が増しているように感じています。(左から)特別活動部長 山田雄太先生、校長 鈴木 健先生、カリキュラム開発事業部 髙木一輝先生教職員と生徒で学校のあり方を語り合った「がやがや会議」。自校の良い点、課題などが模造紙にびっしりと埋まっていった。ナズィファさんの後輩たちの代では「制服について考える週間」を実施するなど、校則により踏み込んだ取組を行っている。校訓の「変わらぬ色の三つ柏。若き生命。高き志操。ペンの象る英知をもちてー」と矛盾がないことを確認してつくられた、「スクール・ポリシー」のイメージ図。同校で「高き志操」の象徴としている北斗七星を配したのは鈴木校長のこだわり。ナズィファ・ファウズィさん2020年卒業生・元生徒会長学校データ●岐阜北高校のGP272022 JUL. Vol.443スクール・ポリシーをみんなのものにする高校事例

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