キャリアガイダンスVol.443
28/66

には大きな意義があると思います。 策定方法も一律ではありません。管理職などが学校教育目標や建学の精神などから演繹的に原案を作成し、それをみんなで精査していく方法。あるいは、最初にみんなの願いや日頃の教育実践などを集め、そこから帰納的にまとめていく方法もあり、各校の状況に合わせて行えばよいと思います。 いずれにしても一部の先生だけで作るのではなく、さまざまな関係者に参画してもらうことが大切。「自分たちの学校」という当事者意識の醸成にもつながるでしょう。 すべての学校がスクール・ポリシーをゼロから作り始める必要はないと思います。既に学校教育目標や建学の精神などが十分に機能している学校では、それをスクール・ポリシーに乗せ換えれば済む話かもしれません。しかし、従来の目標などが教職員間で強く意識されておらず、校内外への共有・浸透も不十分な場合は、教職員や生徒、学校外関係者の皆さんで目指すところを再確認し、魂を込めて言語化することスクール・ポリシーの策定に関する現場の先生方からの声について、学校経営の専門家にアドバイスをいただきました。学校全体で効果的に取り組み、スクール・ポリシーをより良い教育実践に着実に活かすために、ぜひ参考にしてください。たむら・ともこ●九州大学大学院人間環境学府博士課程単位取得退学。教育学博士。中学校・高校教諭、岐阜大学大学院准教授等を経て現職。2021年より中央教育審議会初等中等教育分科会審議委員。専門はカリキュラム・マネジメント、教員研修、学校経営など。大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 田村知子教授 があり、発言せず受け身でいることもできてしまいます。そこで、全員が付箋などに書いた意見を縦横2軸で仕切った4象限に整理していくなどのワークショップ形式での実施をお薦めします。全員が考え、フラットに意見を挙げることができ、また発言記録が残るという利点もあります。カリキュラム・ポリシーの検討には、これまでの取組を踏まえ、生徒やカリキュラムに関する強み・弱みのマトリクスを作って現状分析する、SWOT分析も有効でしょう。 いきなり抽象的な言葉で議論するのではなく、まずは日頃先生方が見ている生徒の姿を語り合うことから始めてはいかがでしょうか。「あの子は3年間でこう成長した」「こんな行動が気になる」など、生徒の良さや課題感について、先生方一人ひとりの思いを引き出していくのです。スクール・ポリシー策定に前向きではない先生も、生徒の姿はいくらでも語れるはずです。 しかしながら、話し合いではどうしても強い意見にかき消されてしまう声力はかかりますが、そうしてでき上がったスクール・ポリシーを基準に、肥大化しがちな学校の教育活動を見つめ直し、精選・重点化することで、教員の働き方改革につなげることも可能です。コロナ禍は図らずも、これまで当たり 関わる先生方の負担を減らすには、最初にスクール・ポリシー策定までの計画を立て、突発的に招集するのではなく、既存の会議や校内研修の機会の活用に努めることが大切でしょう。 それでも策定には多少なりとも労取材・文/藤崎雅子 イラスト/桔川シン(28~31ページ) 撮影/平野 愛282022 JUL. Vol.443

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る