332022 JUL. Vol.443誌上 進路指導ケーススタディ 生徒との関係と 理解をどう深めるか進路相談をするうえで、どうも生徒が言っていることが要領を得なくて今ひとつわからない。話をしても、結局その後の行動に変化がなく進展しない。そんなもどかしい思いや、もやもや感を抱えることがあるのではないでしょうか。それらを解決していくためにも、相談の基本となる「傾聴」を見直してみましょう。取材・文/清水由佳 イラスト/おおさわゆう第24回かりまざわ・はやと●1986年岩手大学工学部卒業後、岩手県の公立高校教諭に。早稲田大学大学院教育学研究科後期博士課程単位修得退学。教育学、教育カウンセリング心理学を専門とする。2015年4月より現職。会津大学 文化研究センター教授 苅間澤勇人先生 【監修&アドバイス】進路指導に役立つ技法●傾聴 相談の場面において「傾聴」が大切ということは、当然のこととして理解されていると思います。特に、問題や悩みを抱えた生徒に相対するには、指導や指示・説教ではなく、まず相手の話をしっかり「聴く」ことが重要になります。それは、普段の先生対生徒という関係性ではなく、ある種対等な人として生徒を尊重し、大切にしているというメッセージにもなります。 「傾聴」では、言っていることを理解する言語的な傾聴(「耳」で聴く)だけでなく、態度や仕草、表情など非言語によるメッセージをしっかり受け取ったり(「目」で聴く)、気持ちや感情などに共感し、寄り添える姿勢(「心」で聴く)も重要になります。上記のようなありがちな場面でも、ちょっとした態度や受け止め方が、傾聴ができているかどうかの違いとなります。 Bのような姿勢になると、生徒は「ちゃんと聴いてくれる」という安心感を得ることができます。さらに、きちんと向き合って対等に扱われ、大切にしてもらえているという実感を得ることができます。それが、「自分は大切にしてもらえる存在なんだ」「自分は価値ある存在なんだ」という自信にもつながり、問題や悩みを自分で解決する勇気や主体性が生まれるのです。しっかり傾聴するからこそ、生徒の主体性が生まれる休み時間の職員室。次の授業の準備をしていたところ、生徒が職員室の入り口付近をウロウロして中を覗いている。A ほら、じゃまじゃま。早く教室に戻れ。 もうすぐ授業だぞ。B どうした?(近づきながら) 何か話したいことがあったか?シーン1保護者との3者面談で、進路の話をしていたが、本人はずっと下を向いたまま。A ちゃんと話をしてくれないと、 お母さんも先生もわからないぞ。B 何か言い出しづらい思いがあるのかな。 よかったら聴かせてもらえる?シーン230分後に始まる会議用の資料を作成していたところに生徒が来て、「先生、ちょっと話があるんだけど…」と声をかけてきた。A (仕事を続け、PCを見ながら)何? 今時間がないから後にしてもらえるかな。B (仕事の手を止め顔を見ながら)もうすぐ会議で5分くらいしか時間が取れないけど、それでもいいかな?シーン3教室や職員室で生徒から相談をもちかけられたとき。A 生徒は立たせたまま、話を聴いている。B すぐに座らせて話ができるように、 いつも近くに椅子がある。シーン4日頃の対応、どちらが近いですか?
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