キャリアガイダンスVol.443
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進路指導主事佐藤巧二先生「大事なのは、ミスマッチが起こらないこと」と、進路指導主事の佐藤巧二先生。そのために、「自分を見つめる」「企業を知る」の両輪で、マッチングを重視した進路指導を実践してきた。「自分を見つめる」ためのツールの一つが、キャリアパスポートだ。愛知県では3年前から導入しているが、活用状況は中学校により異なり、中学校からの積み上げがある生徒もいれば、実質的に高校からスタートする生徒もいる。同校ではプリント形式のものを使い、3年間を通して1冊のファイルに綴じ、面談や就職活動、進学の際に振り返りやすいようにしている。「毎学期の頭に目標を設定し、学期末には、どんな資格に挑戦したか、定期テストや部活動はどうだったか、何ができて何ができなかったか、といったことの振り返りを行っています。ただ振り返るのではなく、そこから見えてきた課題を次の学期に活かしていくというPDCAサイクルを回し、自分で自分を高めていけるような指導を心掛けています」 キャリアパスポートに自分で考えたことを書くことは、履歴書などを書く練習にもなる。一方、最初はなかなか書けない生徒も少なくない。そんな生徒には教員が寄り添い、「問いかけながら指導するようにしている」と佐藤先生は言う。「どういうことを考えているか、将来何をしたいかなど、生徒がうまく言葉にできない部分を会話のキャッチボールにより引き出して、これってこういうことだよね、と置き換えながら話をしています。最終的には志望動機などを自分で書かなければなりませんから、進路指導に限らず、考えていることを言語化する支援は意識的に行っています」 また、「企業を知る」ため、1、2年次には県内の事業所を訪れる「工場見学」を、進路指導行事の一環として実施。コロ 佐織工業高校として1976年に愛西市に開校した。グローバル化、デジタル化の進展に伴う産業界のニーズの変化を踏まえ、愛知県では2021年度にすべての県立工業高校を工科高校へと改称。同校も愛西工科高校として生まれ変わり、機械科、電子工学科に加えてロボット工学科が新設され、建築デザイン科も名称が新たになった。現在は4学科体制で、校訓「活(いかす) 物をいかし、人をいかし、己をいかす」は、校名が変わった現在も引き継がれている。 進路については、生徒の8~9割が就職を希望。ここ数年は専門学校・大学への進学希望者も若干増えており、大学進学は指定校推薦が中心となっている。高校受験時に学科を選択する必要があり、なかには「なんとなく」決めてしまう生徒がいるのが実情。高校で専門分野について学んでみたものの、思っていた内容と違う、自分には向いていないと、進路を変更する生徒も一定数いる。課題は、企業・学校と生徒とのマッチング。生徒が自分を知り、企業・学校を知ったうえで納得のいく選択するために、そして、入社・入学後のミスマッチを防ぐために、自己を深く掘り下げる力、そしてそれを表現する力を育てることに取り組んでいる。取材・文/笹原風花大学進学4人、専門学校進学29人、就職131人、その他(受験準備など)5人就職先・進学先は愛知県を中心とした中部地方の企業・学校が多いが、求人や指定校推薦は他府県からも来ている。求人の状況は、コロナ禍の影響を受けることなく、大きくは変化していない。1976年開校/ロボット工学科、機械科、電子工学科、建築デザイン科/生徒数393人(男子387人・女子6人)「キャリアパスポート」で自分を見つめる工場見学、社会人講話で企業や仕事を知る372022 JUL. Vol.443

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