学科ごとに開催される卒業生によるガイダンスの様子。先輩のリアルな話は、生徒が自分の進路や将来を考えるきっかけになっている。な仕事をしたいの?」など漠然とした質問だと生徒は答えにくいんです。どんなことをしていると時間が経つのが早く感じるか、実習で図面を書いているときとパソコンで作業をしているときとどちらが楽しいか、コツコツやるのが好きか嫌いか…などと尋ねるようにしています。具体的なシーンを思い浮かべながら考えることで生徒も仕事に対するイメージが掴め、じゃあこういう仕事が向いているかもしれないね…と進路選択につなげていくことができます」 コロナ禍以前は生徒の約9割が就職希望だったが、この2年ほどは進学希望者が若干増えている。その理由について、「コロナ禍で経済が不安定ななか、就職を先延ばしにして見定めようという心理がはたらいているのかもしれない」と佐藤先生は推測する。 進学希望者への指導においても、重視しているのはミスマッチの防止だ。同校では学科横断の「大学進学コース」を設けており、進学希望者は専門科目が少なめに設定されたカリキュラムで学ぶ。「一部の専門科目の代わりに、数学、英語など普通科で学ぶような科目を学びます。受験に必要だからという意味合いではなく、大学に入ったものの一般教養科目の授業についていけない…というミスマッチを避けるためです。本校では進学希望者は多くはないですが、希望すれば入学後まで見据えてしっかりとサポートする体制が整っています」と、やはり全体として良くないんです。言葉で、勉強も大事だからがんばれよ、と言うだけでは響かなくても、数字やデータとして提示されると、このままじゃまずいなと刺激になると思うんです」 その一方で、1名のみの求人に2名の志望があった場合は、成績だけでは選考しないようにしていると言う。「校内選考が必要なケースでは、一般的には成績上位者が選ばれますが、本当にそれでミスマッチが起こらないのか、十分に注意する必要があります。愛知県は製造業が盛んで、高卒の人材も求められており、県内の工科高校の生徒にとっては売り手市場。だからこそ、条件面だけでは選んでほしくないんです。〝行ける会社〞ではなく、〝行きたい会社〞を選ぶことが大事ですから」 さらに佐藤先生は、こう続ける。「〝行きたい会社〞を選ぶためには、自分はどんなものを作りたいのか、何を生業にしたいのかを深掘りし、それができる企業を選ぶことが大切です。ただ、『どんちろんですが、前年の学年で見えてきた課題も大事にしています。試験会場にたどり着けない、面接で想定外の受け答えをしてしまったなど、毎年、何かしら問題が起きるんです。同じ問題が再発しないよう、上の学年の失敗体験を下の学年の進路指導に活かすようにしています」 採用試験や入試で面接を受けた生徒は報告書を提出することになっており、質問項目や試験内容などを回答する。佐藤先生は集めたデータを集計し、キャリアデザインノートにランキングにして掲載。こうすることで、近年の傾向なども見えてくるという。「キャリアデザインノート」では、採用・不採用の結果と高校での成績の相関関係も提示している。「生徒に発破をかける意味合いもある」と佐藤先生は言う。「入社試験で不採用だった生徒の基礎学力テストや定期テストの成績を見るミスマッチが起こらないよう、進学後まで見据えてサポート企業にとっても生徒間での認知度が上がるというメリットがあるので、マッチングの視点も意識しながら企業と一緒にやっていきたいと考えています」 また、生徒のなかでもインターンシップを経験してほしい層があると佐藤先生は言う。「部活もやっていない、資格取得にも熱心じゃない…という生徒に、外を見せること、経験させることで、刺激を与えたいんです。一生懸命に働く大人の姿を通して、働くことの大変さや尊さを肌で感じてほしいなと思っています」 マッチングを重視した進路指導の結果、入社・入学後のミスマッチは最低限に抑えられている。今後に向けた課題として佐藤先生は、「生徒を外に出すこと」を挙げる。「現状ではインターンシップが手薄なので、1、2年生を対象にしたインターンシップを充実させていきたいと考えています。特に大事にしたいのが、地場の中小企業です。生徒も勉強になりますし、地場の中小企業と連携し、インターンシップを充実させる〝行ける会社〞ではなく、〝行きたい会社〞を選ぶ392022 JUL. Vol.443
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