1887年創立。先進文理コース、文理コース、インターナショナルコースの3コース制。 ICT教育に力を入れていることで知られ、3Dプリンタや3Dスキャナなどの施設・設備も充実。2021年からは「K-STEAM」という工学院独自の先進的教育を推進している。工学院大学附属中学校・高校(東京・私立)まとめ/長島佳子 撮影/竹田宗司 現代社会で求められている力は、知識の積み上げではなく、世の中にあふれている知識や情報の中で、いかに自分に必要な情報にたどり着けるかという選別する力と、その知識を総合的に組み合わせて新しい価値を生み出せる応用力です。本校の生徒にもそうした力を育みたいと考えています。 本校の校訓は「挑戦・創造・貢献」です。そのなかでも「挑戦」が最も重要と私は捉えています。何かに挑戦しなければ、創造することができず、新しい価値を創造した結果として社会に貢献できるからです。挑戦には失敗がつきものです。プロ野球のバッターですら3割打てたら良い方で、7割は失敗。だから生徒にも教職員にも、失敗を恐れず挑戦してほしい、結果の責任はすべて校長が負うと伝えています。学校は、安心して挑戦できる場所であるべきなのです。 生徒が挑戦できる環境とするために、授業は生徒中心のグループワークやPBLを多く取り入れています。そして、情報社会を先導するような総合的課題解決力の育成のために、「K-STEAM」という、グローバル・リベラルアーツと数理情報工学を融合した、工学院らしい先進的教育を、充実した施設の中で実践しています。 本校の最大の強みは工学院大学の八王子キャンパス内にあることです。大学の設備を利用できるだけでなく、中高生が大学生や大学院生と一緒に活動したり、大学教員から指導を受けることで、最先端の学びに触れながら、思考力・判断力・表現力に磨きをかけています。将来的には高校3年生が工学院大学の1年の授業を受けて単位取得ができるような体制にすることも検討中です。 時代の変化とともに学校は変わらなければなりません。しかし、急激な「改革」や「刷新」は生徒に混乱を招きます。改革ではなく「小さな改善の積み重ね」を教職員にも生徒にも求めています。昨日より今日の、今日より明日の自分や学校が少しでも良くなっていること、「最新の工学院が最高の工学院」であることを目標に、日々の学校活動に取り組んでもらっています。 私自身は強力なリーダーシップで引っ張っていくタイプではなく、多様な教職員たちと調和しながら一つの目的に向かっていくオーケストラの指揮者みたいな存在だと思っています。指揮者は音を鳴らせませんから、方向性だけ示して具体的なアクションは個々の教職員に任せています。迷ったり悩んだりしたときには、いつでも相談に乗れるよう、校長室のドアは常時開放しており、日々教職員や生徒が訪れてくれます。 学校は生徒にとっても教職員にとっても楽しく充実した場所であってほしい。「~ねばならない」「~べき」ということに捕らわれず、臆せずのびのびとやりたいことに挑戦できる場にしていきたいです。なかの・よしあき/芝浦工業大学大学院修了後、1990年日本アイ・ビー・エム大和研究所入社。故郷の同級生からの誘いで1993年に三重の県立高校の講師に転身。その後、県立高校教諭、大学講師・准教授など多様なキャリアを経て、2013年に再び大好きな担任活動ができる高校教諭に。2019年神戸市立科学技術高校教頭に就任。2021年より現職。工学院大学教育支援機構教育開発センター特任教授を兼任。一般社団法人情報処理学会・初等中等教育委員会委員長。情報オリンピック日本委員会・理事。挑戦し続けることで、新しい価値が創造され、社会に貢献できるオープンドアポリシーで常に校長室に教職員や生徒が412022 JUL. Vol.443
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