1939年株式会社大丸の元社長 里見純吉の発意に基づき大丸洋裁研究所を設立。2005年現校名に改称し、一部男女共学化。2018年全コース共学化。特進Ⅰ・Ⅱ類コース(キャリアフロンティア、キャリアプログレス)、文理進学コース(リベラルアーツ、ベーシックサイエンス)、英語国際コース(グローバル、インテンシブ)、音楽コース、美術コース。2021年に制服を一新。大阪夕陽丘学園高校(大阪・私立)まとめ/堀水潤一 撮影/山田紗基子 本学園は、名望の事業家、社会教育家である里見純吉により1939年に設立されました。創設者は「教育に関与する者の仕事は、農夫が培い水を注いで作物を成長させるが如く、若い生命を育てること」「鉄工所で鋳型に入れて物を作るように、学生を扱ってはならない」という言葉を残しています。すなわち教師の仕事は、生徒自らの成長する力を信じ、手助けすること。これは、自律した学習者の育成を目指す今の教育改革の流れと重なります。 若いころの私は、それと正反対のタイプでした。「自分についてくれば結果は出る」とばかりの厳しい指導で、実際、ハンドボール部の指導者として実績も出してきました。しかし、それでは限界があることに気づかせてくれたのは生徒たちです。期待されていなかった代の選手が自ら目標を立て、考え、動き、結果につなげたとき、私の指導観に変化が生じました。本人がやる気になったときの力は計り知れません。教師は、つい口を出したくなりますが、我慢することを覚えました。 教職員に対しても同じです。先生方が自ら手を挙げ、行動に移す組織には力があります。ただ、各自が好き勝手にしてはまとまらないため校長が方向性を示す。その際、最上位の概念として重んじているのが建学の精神です。 前任校で若くして管理職に抜擢され、社会の変化や教育改革の動きを学ぶなか、自分は古いタイプの教師であったことも自覚しました。以降、各地に足を運んでは著名な先生方にも教えを請うなどして、本校にも新しい風を吹かせています。その一つが探究活動です。企業が提示する課題を解決するプログラムではグランプリを獲得したチームも現れました。来年度からは修学旅行にPBLの要素を組み込む予定です。訪問先である沖縄の貧困や基地問題などについて、現地の人々とつながりながら1年間かけて課題解決に取り組みます。 来年度は、学校設定科目「言語技術」(仮)も導入予定です。日本語を、情感ではなくスキルとして扱えるようにするもので、小論文や面接のほか、問題文の読解などにも活かされるでしょう。生徒の自主性という点では、自習室も充実させました。外部講師や学生がチューターとして週3日常駐し、放課後の生徒の自習をサポートしてくれます。答えのない時代においては、教え方にも正解はありません。多様な生徒一人ひとりにあった、さまざまなアプローチを用意するつもりです。 制服も一新しました。環境に配慮し、糸一本からのリサイクルに対応した、その名も「SDGs制服」です。従来の制服も評判がよかっただけに反対意見もありましたが、学校が変わろうとしていることのメッセージとしたかったのです。大阪ミナミの文教地区にあり、周辺には名だたる伝統校が存在します。そのなかにあって目標は、新しい教育観では地域一番の学校にすること。まだまだ課題はありますが、皆さんから、「いい学校やで」と言ってもらえる学校を目指しています。おおさき・としひと/1969年生まれ。大阪体育大学体育学部卒業。1992年夙川学院中学校・高校(現 夙川中学校・高校)赴任。保健体育科主任、教頭、校長を歴任。全国屈指の強豪校のハンドボール部監督としてインターハイ優勝など高い成績を残す。40代前半で校長に抜擢され学校改革に携わるも、経営体制の変化に伴い退職。2018年に大阪夕陽丘学園高校に教頭として赴任。教頭兼副校長を経て2022年より現職。朝一番に登校することが日課。「誰もいない学校にいると不思議と変化に気づくんです」。日常業務を職員室で行うのも同じ理由。校長が方向性を示したうえで、生徒、先生の自主性に委ねる新しい教育観では地域で一番の学校にしたい432022 JUL. Vol.443
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