532022 JUL. Vol.443てどのように貢献していくかにも意識を向けて、今後の在り方・生き方を考えていく。「将来やりたいことと、社会課題が結びついていない生徒も少なくありません。例えば、保育士を目指しているが、保育所をめぐってどんな問題があるのかをあまり知らないことなどがあります。この活動が、社会のリアルに目を向けて、将来を考えるきっかけになればと考えています」(飯塚先生) 具体的には、SDGsについて学び、その枠組みを使って、将来やりたいことが社会のどんな課題の解決につながるのかを考えたうえで、自分の将来像や進路についての考えを大学志望理由書「私の進む道」としてまとめる。これを全員が大学入試に使用するわけではないが、志望理由書という形式を使うことで、これまでの活動の延長にある進路と、社会をつなぐことがねらいだ。「本校ではほとんどの生徒が大学進学を希望しますが、なぜ大学に行くのか、大学で何をするのか、しっかり考えたうえで進路選択してほしいと願っています」(飯塚先生) 公孫樹プログラムがスタートして3年目。さまざまな場面で、生徒の意欲や行動の変化が見られるという。「公孫樹プログラムでの取組では、自分なりに工夫をこらし、こちらが期待した以上のアクションを起こす生徒が、少しずつ増えています」(飯塚先生)「公孫樹プログラムがきっかけで、高校入学時に考えていた進路を変更する生徒も少なくありません。自分が将来どう生きるか、どう社会と関わっていくかを考え、意志をもって進路選択するようになってきたのではないでしょうか」(小野寺先生) また、このところの大学合格者数において、総合型選抜と一般選抜のどちらにおいても過去最高が更新され続けているが、その要因の一つに公孫樹プログラムへの取組もあると考えられている。「興味関心から取り組む課題研究が総合型選抜に活かせているだけでなく、将来に向けた腹のくくり方が変わったことや、自分の可能性を信じて挑戦するようになったことが、一般選抜を含めた目標の突破につながっているのかもしれません」(小野寺先生) 総合的な探究の時間運営委員会を中心として、毎年、生徒たちの反応や取組状況を見ながら公孫樹プログラムの改善を重ねてきたことは、「大変だが、教員としての引き出しが増えた」(飯塚先生)など、教員の学びにもつながっている。今後も公孫樹プログラムの価値を学校全体で共有し、取組をバージョンアップさせていく方針だ。「新しい社会を生きる生徒たちは、私たち上の世代にはない発想や考え方をもっています。生徒たちを引っ張っていくというより、一人の人間として尊重して、共に歩んでいくことが教員の役割ではないか…公孫樹プログラムに関わるなかで、その思いが一層強くなりました。一教員にできることには限りがあることも認めて、外部の協力も得ながら、生徒たちの可能性を存分に伸ばしていきたいと思います」(飯塚先生)主体的な行動や意志ある進路選択が増加「できない」と諦める前に行動してみよう2年生のとき、課題研究で「高校英語の模擬授業を考える」というテーマで、自分で考えた授業を実際に自分のクラスで実施してみて、気づいたことをまとめるという取組をしました。いろんな文献を参考にしながら授業案やワークシートを作成して、ペアワークからの気づきを大切に実施したところ、みんなから「わかりやすかった」という感想をたくさんもらい、すごく嬉しかったです。1年生のとき、先輩の研究内容を聞いて「自分にはこんなすごいことできないよ」と諦めの気持ちがあったのですが、やる気次第で自分にできることが広がっていくんだな、と気づきました。諦める前に、誰かに相談するなどして、自分で行動してみることを大切にしていきたいと思います。(3年生・熊倉真由子さん/写真右)研究テーマを今後も追究していきたい課題研究では、化粧水の成分とpHの関係性をテーマにしました。理由は、単純に化粧品が好きで、どんな成分にどんなメリットがあるのか気になっていたからです。薬剤師の叔母に皮膚疾患について教えてもらったり、関連する論文を紹介してもらったりして知識をインプットし、また、成分によってpHがどうなっているのか、友達から集めた10種類ぐらいの化粧水のpHを測定器で調べたりしました。新たな発見も多く、興味のあることを調べるうちに、関連した別のことも知りたい、と興味がどんどん広がっていきました。課題研究では、知りたかったことのすべてがわかるまではできなかったので、大学進学後もこのテーマの追究を継続し、自分なりのアイデアを活かして新しいものを生み出せたらと思っています。(3年生・渡邉紗彩さん/写真左)Interview図4 到達度チェック表(1学年)※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.443)「思考力」「想像力」「探究力」「表現力」の4点についてのチェック表を用い、中間発表時と最終発表時に生徒が自己評価を行う。下記シートは「思考力編」のみだが、他のチェック表はダウンロードサイトより入手可能。中間発表最終発表評価基準達成度(S〜Cランクの横に〇をつける)S自分たちの解決法を、客観的に検討しようとする姿勢が見られる。A適切な情報を用いて、筋道だった思考の過程の論が立てられている。SB適切な情報を用いて、筋道だった思考の過程がある程度分かる。AC適切な情報を用いて、筋道だった思考の過程が部分的に分かる。B適切な情報を用いて、筋道だった説明をしようとする試みが見られる。C地域課題解決の構成が論理的でなく、思考の過程が分からない。公孫樹プログラム 到達度チェック表【思考力編】
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