【理事長プロフィール】むらかわ・ひでお●1979年生まれ。学生時代よりアメリカンフットボールに打ち込む。実業団選手引退後、学校法人村川学園に入職。広報担当・法人本部長(兼 大阪調理製菓専門学校校長、東京山手調理師専門学校校長)などを経て2022年7月より現職。【学校法人プロフィール】1983年学校法人村川学園設立。大阪調理製菓専門学校(大阪府泉大津市)、大阪調理製菓専門学校ecole UMEDA(大阪府大阪市)、山手調理製菓専門学校(東京都渋谷区)、東京山手調理師専門学校(東京都世田谷区)、大阪健康ほいく専門学校(大阪府泉大津市)に加え、すこやか認定こども園(大阪府泉大津市)を運営。努力よりも大切なのは夢中になれること。その機会を「毎日実習」で提供̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/正畑綾子学校法人村川学園理事長村川秀夫コロナ禍以降、飲食業は社会情勢に翻弄されました。厳しい現実を突きつけられた一方、人々の食に対する関心の高さや、食文化の可能性を感じることもできました。だからこそ私は、西欧の職人がそうであるように、この業界に携わる、真面目で才能ある人々の社会的地位を、もっともっと高めていきたいと痛切に感じています。そのためには料理人やパティシエ自身が、技能は当然、人格や品格を含めプロフェッショナルとしての自覚をもつことが必要であり、本学園の先生方には、その見本となってほしいのです。挨拶や身だしなみはもちろん、休憩時間の過ごし方にいたるまで学生に影響を与えていることを認識し、職人とし年制課程である調理師科・製菓衛生師科の実習時間はともに年間700時間以上。国家資格取得に必要な実習時間を大幅に超えています。人によっては、しんどいと感じるかもしれません。けれど、スポーツの世界で育てられた人間として断言できるのは、練習の繰り返しで身につけたことは簡単には忘れないということ。もっとも、努力や根性という言葉が今の時代になじまないことも承知しています。努力は大切ですが、それ以上に、夢中になれることが重要なんですよね。そこで、心を揺さぶる実習の機会を数多く用意したうえで、例えば「ゾーンに入ったときは驚くほどのポテンシャルを発揮できるもの。だから夢中になれる体験をたくさんしよう」などと語りかけています。願わくは、学校にいる間に、成功体験だけではなく失敗を多く積んでほしい。附属レストランなどを使った本番トレーニングでは、お客さまからお叱りの言葉も頂きます。そうした試練を乗り越えて得た自信を現場で活かしてほしいのです。実際、保育や福祉分野も含め、就職先からは「おたくの卒業生は粘り強い。教職員も熱い」という声も頂きます。「村川学園はどこか違う」と感じてもらえる学校づくりをしていくつもりです。てではなく教育者として学生と接してほしい。そう言い続けてきたことで村川学園は大きく変わってきました。 料理人にはまた、周囲に対する目配り気配りやホスピタリティ精神、吸収力や柔軟性、センスや発想力も求められます。写真や建築、歌やダンスなど、調理とは一見関係なさそうなことを授業に取り入れているのもそのためです。 もちろん、基礎基本ができていないことにはクリエイティブやイノベーションは生じませんし、質を高めるためには量をこなすことも必要です。そこで各校「毎日つくる実習」を掲げ、理論や知識を頭で覚えるだけでは終わらず、必ず毎日、体とリンクしながら学ぶことを重視しています。例えば、1552022 JUL. Vol.443
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