キャリアガイダンスVol.443
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思い描いている授業のあり方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 授業に参加し、自力で考えることや、発言を受け止めてもらえることを体験し、自信を培う● 地理に関する「なぜ」を考えるなかで、世界との結びつきを理解し、その視点をもって、 自分や社会にとってよりよい判断をする・ 他の社会科の科目の教材研究で得た知見も地理の授業に活用・ 生徒から聴き出した生活体験や、最新のニュースも学習内容に絡める・ 昼休憩時などに校内を回り、授業と同じように生徒に積極的に声をかける地理の授業・ 地理に関する『なぜ』を考えることを通して、生徒に世界との結びつきを感じてもらう・ 世界や全国の地形、気候、産業などを、生徒にとって身近な話題と関連づけて学習する・ 地理に関する問いを投げかけ、生徒が考える・ 机間指導で個々と対話し、さらに思考を深める・ 二択の質問で挙手を求め、思考を促すことも・ 小テストを丁寧に行い、学んだことを再度考える世界との結びつきを感じる全員が問いを考える思考したのなら、私はそのことを前向きに捉えたいと思っているんです。毎授業、個別にやり取りしていくと、そうした生徒も少しずつ書けるようになります」 定期テストで点数が取れるようになって自信をつける生徒や、世界のニュースや環境問題に関心をもつようになる生徒もいる。最近の3年生の地理の授業では、ロシアのウクライナ侵攻という社会情勢を踏まえ、生徒たちが両国の地形や穀物生産量を調べ、この世界や生活への影響を共に考えることもできた。「地理が好きになった」とは言われないが、「恒吉先生 授業で関わる生徒のなかには、最初は「単位のために仕方なく受けている」と、やる気ゼロの態度をあからさまに見せる者もいる。けれども、日々の授業の机間指導で一人ひとりと関係性を築いていくと、少なくとも投げかけた問いを「考えてみよう」とはするようになるという。 また、問いを考えてみたものの、具体的には何も思い浮かばず、プリントの自由記述欄を埋められない生徒もいる。 「面倒くさがって何も考えずにいるのか、考えたけど書けなかったのかは、授業で毎回声をかけていくと、ある程度見えてくると感じています。書くことで表現力もつけてほしいですが、『なぜだろう』との地理で良かった」と言われることはあり、そんなときは恒吉先生としても嬉しい。 もっとも、「教師という仕事はやりがいが見えにくいものでは」とも思っている。「生徒が卒業を迎えたときや、進路実現を後押しできたときは感慨深いですが、一番あってほしいのは、この先の生徒の人生のどこかで授業で学んだことが役立つことで、それを教員が目にすることはまずないと思うのです。でも、縁あって出会えた生徒たちがいずれはそう思えるようになってほしい。そういうイメージをもって授業に取り組むようにしています」生徒はこう変わる地理の問いと向き合うなかで世界への関心が高まっていく■ 生徒INTERVIEW――恒吉先生の地理の授業の特徴と言えば何でしょう?森本「例え話でわかりやすく説明してくれます。モノの値段(原材料費+輸送費+機械代+電気代+人件費)の話を、バイク好きの男の子にどんな部品があるか聞いて、それを例に話してくれたり。みんなの意見も聞いてくれます。割り箸は環境を害すと思う? 害さないと思う?とか」藤川「最初に、生徒が自分で考える時間があるんです。今日だったら好きな料理を書いて、食材の自給率を調べることから始めたり。中学校までは、教科書や地図帳に線を引いてとにかく覚える感じでしたが、今はいろいろ考えながら単語を学んだりするので、楽しいし、覚えやすいです」森本「前の授業で『国として認められるために必要なこと』も考えたよね。人がいるというのは浮かんだけれど、領域と主権は出なかったので、そうなんだと思いました。小テストでは自分が書いたプリントも見返せるので、だいたいできるようになって、記憶力もあがったと思います」藤川「恒吉先生は校内ですれ違うと『困っていることはない?』と言ってくれるし、授業中もみんなに声をかけてくれて。中学校のときは先生と話せなかったけれど、今は普通に話せるし、コミュニケーション力もついたかな、と思います」――地理に関わることで興味をもつようになったことはありますか?森本「地球温暖化や環境のことです。道路にペットボトルが落ちていると、自分も気になるし、車にも危ないから、拾って捨てるようになりました」藤川「前までスルーしていたニュースに目が留まるようになりました。コロナの話でWHOとか出てくると、これ習ったなあ、と思うようになりました」考えながら学ぶので、記憶に残るしニュースに目が留まるようになった左より、1年生の森本花那さん、藤川春日さん授業で投げかける問いの一例。「国の定義とは?」「国家間の争いをなくすには」といったことを生徒が自分で考える。592022 JUL. Vol.443

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