リクルートサービスを活用した実践事例【学習】 北海道最南端に位置する北海道松前高校は、生徒数57人。1学年1学級の小規模校で、生徒は同一町内の中学校からもち上がりのような形で入学してくるため、学力にかなりバラツキがあることが、例年の学習指導の課題だという。「進学と就職の比率は半々。基礎学力向上のために2017年からは『スタディサプリ』を導入して『到達度テスト』を行い、連動課題を配信してきました。コロナ禍で生徒任せになっていたこの活用を見直そうと考えたのは、2021年です。トライアルとして、1年生に秋の『到達度テスト』に向けた予習配信を実施してみると、高校1年どころか、中学の履修内容をきちんと理解できていない生徒が多かった。進学組でも、です。そこから、『スタディサプリ』の新しい活用法の模索が始まりました」と進路指導部主事の駒木佑先生。「中学の勉強ができていないだけでなく、『就職するから到達度テストはできなくていい』と公言する生徒もいます。そうなると、テストに向けて勉強しても、モチベーションが続きません。そこで考えたのが、『中学までの勉強は一般常識』というアプローチです。これなら、進学組も就職組も、必然性のある学びだと納得できる。他の教員とも相談をし、授業内容は『到達度テスト』でフォローしながら、〝中学校総復習〞を学びのテーマにしていこうと決めました」と駒木先生。 そして、2022年1月からスタートしたのが「一日一個中学校総復習」と題した課題配信。「スタディサプリ中学講座」の英語と数学の単元テストを、「for TEACHERS」機能を使って中学1年生の頭から順番に配信していくというものだ。「配信された課題はその日のうちに行うこと、間違えたら必ずフォローアップ動画を確認することの2点がルールです。中学1年からの復習なので、できる生徒はあっという間に終わります。勉強が苦手な生徒からも『昨日の課題はすぐできた、簡単だった』と声が聞こえるようになりました。生徒たちの小さな成功体験が他の生徒にも影響を与え、今は、いい意味での競争意識が生まれてきたと思います」 こうした変化を学ぶ力につなげていこうと、同校では、この5月から「スタディサプリ中学講座」の動画を使い、国・英・数の40分講習もスタートさせた。「対象は1、2年生の希望者。講習は月曜・国語、水曜・英語、金曜・数学で、各教科、『基礎』と進学生徒向けの『発展』があります。担当教員が動画の重要な部分を解説し、質問に答え、課題の相談も受けているので、生徒からは好評です」 アイデアがすぐに形になるのは、職員室の風通しがいいからと駒木先生。「全校で取り組み始めた中学校総復習。どんな結果が出るか楽しみです」と言う。中学の問題が解けない。学力が伸びない根本原因をどう解決していくか課題「一日一個中学校総復習」、中学講座の講習、到達度テストの3本柱で学力UP活用「中学までの勉強は一般常識」とアプローチ。進学・就職組とも納得して学べば成長につながる 中学範囲学び直し 中学講座 基礎学力の定着 課題配信【活用キーワード】進路指導部主事駒木 佑たすく先生(英語)創立1948年/普通科(男女)/生徒数57人(男子31人、女子26人)進路状況(2022年3月実績)大学2人、短大1人、専門学校等10人、就職10人、その他1人北海道松前高校(北海道・道立)スタディサプリ活用法「一日一個中学校総復習」の課題と到達度テスト連動課題を配信左は、駒木先生による「スタディサプリ運用計画」。1、2年生は春と秋、3年生は春のみ「到達度テスト」を行い、連動課題を配信。「スタディサプリ中学講座」からは「一日一個中学校総復習(英・数)」を配信。課題配信は「for TEACHERS」の管理画面で一括管理と情報共有が可能なため、進路指導部が配信、学年担当が生徒の提出率などをモニタリング。教科担当は、講習で解説したほうがいい課題をチェックするなど、役割分担を決めておくことで、教員間の意見交換がスムーズに進むと駒木先生。スタディサプリ中学講座を活用した英・数・国の希望者講習講習は、生徒たちが部活に行くことも考慮して、月・水・金の15時45分~16時25分まで。写真は、中学1年の英語の基礎講習で、この日は1年生13人(20人中)、2年生7人(24人中)が参加した。解説は英語の杉村 毅先生。1年生のときに中学1年の復習を始め、高校2年になった今は、中学2年の復習をしています。最初は「一日一個」の課題ができていなくて居残りも経験しましたが、苦手だった英語は、基礎が学べて成績が上がりました。得意な数学は先に進みたいので、今は予習中心です。担任の先生が受験に向けたスケジュールを作ってくれたので、今はそれに合わせて勉強をしています。(斎藤 空さん・2年生)●全国大会出場回数の多い書道部に所属しているので、1年生の後半から課題が一度に二つ(「一日一個」の英・数)も増えたときは、部活との両立が大変でした。でも、毎日勉強する習慣がつき、英語の苦手が解消され、設問を読むコツが掴めてミスが減り、成績が下がらなくなりました。医療系への進学を目指しているので、今は、生物の予習復習に力を入れています。(坂本真香さん・2年)● 生徒たちの活用法取材・文/丸山佳子632022 JUL. Vol.443
元のページ ../index.html#63