キャリアガイダンスVol.443_別冊
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4Vol.443 別冊特集どを担当するソリューション部門に、データサイエンスによって横串を通し、有機的に連携させていくこと。これが大きな目的の一つになっています」 では、これからデータサイエンティストを目指す高校生は、日々の学習や進路選択にどのように取り組めばいいのだろう。 「一つの大きな課題は高校での文理選択です。データサイエンティストを目指すには統計学をはじめとする数学は必須ですが、文系を選択することで高校の段階で数学を学ばなくなってしまうのはもったいないですね。また、文理選択するにしても、理系を選択する学生の割合が日本はあまりにも低いというのも問題です」図4は、最終学歴が理系である人の割合の国際比較。ドイツは理系を最終学歴とする人が36%、フランスでは30%に上るのに対して、日本はドイツの約半分の19%に過ぎない。教育政策レベルでいえば、この割合を高めていくことが大きな課題であり、個々の高校生にとっては、たとえ文系を選択したとしても、数学の勉強はしっかり続けること、理系学部も進学先の選択肢に加えておくことが大切になるといえる。 もう一つのポイントは前出の3つの力のバランスを早い段階から意識しておくことだ。今は高校でも、情報の授業でPythonなどを教えるところが出てきている。授業でしっかり学んでおけば、データエンジニアリング力の基礎はカバーできる。もちろん数学も高校の授業で学べる。ビジネス力に関しては、高校では該当する科目がないが、マーケティングなどの基本であれば、独学で理論や用語を学ぶことも可能だ。そして、高校の段階では1:1:1でも構わないので、これら3つの力を結びつけて考え、データを課題解決に活かす思考のトレーニングを重ねておくことが将来に活きてくる。例えば、地元商店街の活性化をテーマとしたPBL(プロジェクトベーストラーニング)などに取り組む際に、どのような課題があるのかをデータから探究し、データに基づいて改善策を提案するといったことは高校生でもできることだ。 また、ビジネス現場の課題を高校生が実体験する機会は限られるが、探究学習科目を通して、課題に対して探究的にアプローチし、掘り下げて思考するトレーニングなら十分できる。こういった経験が将来のビジネス力につながっていくだろう。 では、進路選択にあたっては何を意識するべきだろうか。データサイエンスを冠した学部・学科がここ数年でいくつか誕生しており、今後も増えることが予想されている。これらの学部・学科では、3つの力をバランス良く習得できるよう文理融合型のカリキュラムを設けていることが多く、データサイエンティストを目指すなら、これらの学部・学科を選ぶことも有効だろう。 また、図5に示したように、大学生のデータサイエンティストの認知度を調べると、情報学部を除けば実は文理に大きな差はない。このことから、若い世代のうち意識的な層には既に文理融合型の職種として捉えられていることが推測できる。現状では、大学では3つの力のうち1つまたは2つを学び、残り2つは別の形で補う、あるいは就職後に強化するといったやり方で、データサイエンティストを目指す人も多い。その意味では、どの学部に進学しても、データサイエンティストを目指すことは可能だ。 「データを使ってビジネスに革新を起こせるのがデータサイエンティストのやりがいであり、魅力です。また、データの前では皆が平等。今までの企業社会では、経験や知識のアドバンテージが大きく、若いからという理由で活躍の場が制限されるケースが少なくありませんでした。しかし、データサイエンスの3つの力を身につけて、数値を示せるようになれば、若手でも活躍できる。それもデータサイエンティストという魅力の一つです。ぜひデータサイエンティストを目指す若者が増えてほしいですね」と塩崎氏は若者にメッセージを送る。大学生のデータサイエンティストの認知度最終学歴の理系比率の国際比較図5図4出所/一般社団法人 データサイエンティスト協会「学生向けアンケート」(2021年)※「確かに知っている」「なんとなく知っている」「名前を聞いたことがある」の合計出所/OECD「国際成人学力調査(PIAAC2012)」より野村総合研究所作成※最終学歴を自然科学、工学と回答した人の割合(農学、医学を除く)ドイツ韓国アメリカフランスイギリス日本理系_理学・工学・情報学部文系_経済学・経営学部理系_その他文系_その他その他(%)(%)

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