キャリアガイダンスVol.444
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歩くのを終えて戻ってきた生徒たちに、市川さんは「今、撮ってきた写真から1枚、気になるものを選んでスケッチしてみて」と声をかける。グループで模造紙を使い、それぞれ座る方向から描きこんでいく。なかなか写真を1枚に絞れない生徒には「所詮〝なんとなく〟撮ったものだから。なんとなく選ぶ練習だと思って」と市川さんが助言。生徒たちはペンを持つと、黙々と描き始  う行為を通じて、描く対象を深く観察し、めた。歩く間は不安そうな様子だった生徒も、絵を描き始めると表情が変わる。時にはスマホの中の写真を指で拡大しながら、改めて自分が撮ったものを観察している生徒もいた。色の濃淡を表そうとする生徒や、植物の葉の感触、葉脈の構造を表現しようとする生徒。集中して、細かな部分の表現を試行錯誤している。早々に描き終えた先生方は、生徒たちを見回りながら「こんなの、どこにあったの?」「私よりも上手」などと声をかける。スケッチとい発見したことを絵で表現しようとする生徒たちに、先生方は驚いた様子。先生に褒められた生徒たちは、誇らしそうな表情を浮かべた。そして終了時間までペンを置くことなく、熱心にスケッチを続けていた。 「これは何? た瞬間や、描いている間に気づいたことをみんなにも教えて!」(市川さん)。模造紙を広げて、1人1分程度で発表をする。「校舎の脇に、ひどく錆びているロッカーがあった」と、ある生徒が発表する。「錆びの様子がよく描けているなあ! 描いていて発見したことはある?」(市川さん)。「うんと、最近置かれたロッカーにはこんな錆びはなかったので、年月が経つことで、このようにまだら模様で錆びていくのが面白いと思った」(生徒)。それぞれの発見を話す生徒たちに、先生方は驚きの表情。聞くと、日頃は「あなたは何に興味がある?」と聞いてもなかなか自分のことを語らない生徒が、このときは堂々と語っていたという。 「最初は戸惑っていたのに、こんなにすごいスケッチが描けた。なんとなくではなく『〝しっかり〟観察して〝ちゃんと〟発見してください』と言われていたら、この絵が描けていたかな。無駄で無用、自分とは無関係に感じるモノやコト。そんな『雑』をたくさん集めて記録する。その積み重ねで〝勝手に気づく〟ようになっていくんだよ。このあと外に出たら、今まで目に入らなかったものが見えてくるはず」(市川さん)。探究の旅路はわらしべ長者のようなもの。今掴んだのは最初の「わら」。ここからどんどん興味を広げていくことを恐れないで、と生徒たちに語りかけた。どこにあった? 見つけスケッチを葉の尖り方、建造物の濃淡絵を描くことで発見する「こんなに話せたんだ」先生たちが驚いた理由2022 OCT. Vol.44410

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