キャリアガイダンスVol.444
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順風満帆だったわけではありません。寝具メーカーへ事業転換する2004年までは、 釣り糸などを作る押出成形機の製造会社であり、外国との競争に敗れ倒産寸前でした。そんなとき、伯父から再建を託されたのですから、そもそもマイナスからのスタートでした。その後も浮き沈みを繰り返しながら、失敗体験を新たな挑戦の原動力にしてきたのです。最大の失敗は2014年に始めた北米進出でした。日本でヒットした薄型マットレスパッドで勝負したものの、購買習慣の違いからさっぱり売れません。そのため急きょ厚手のマットレスを開発・製造したのですが予想外の事態が起こりました。アメリカ国内でのお客さまへの配送途中で破損するケースが後を絶たずクレームが相次いだのです。その後も会社の認知度は広がらず、ニューヨークの店舗を閉め、撤退を余儀なくされました。けれど、この失敗体験が〝三分割マットレ    今ス〟というヒット商品を生みました。「大型で破損しやすいなら分割しよう」という発でこそ、浅田真央さんなどのCMを通じて認知されるようになったエアウィーヴですが、想です。ちょうど国内でも配送料金が一斉に値上げをした時期。分割して運べるようにしたことで配送料の抑制や、女性一人でも設置可能という利点もありました。三分割したパーツの表裏の硬さを変え、個人の体形や好みに応じて組み替えるアイデアは鍼灸院で思いつきました。私は二度の交通事故で首や肩を痛めており、「治療台の前部だけ柔らかければいいのに」と感じたことがきっかけです。以上の個人的体験から言えることはシンプルです。失敗を素直に認め、なぜ失敗したか原因を突き詰めること。輸送中の破損について「海外の業者は雑だから」と人のせいにしていたらそこで終わりでした。新しいことをすれば失敗するのは当然。若いうちに失敗体験を積めば、大人になっても失敗を恥と感じなくなるでしょう。また、日頃から視野を広くしておくことも大切です。配送業者さんの何気ない動きを見て、「重そうだな、大変だな」などの問題意識をもっていると、何らかのきっかけで点同士つながることもあるでしょう。事業においては非連続的な体験が大切とも言われます。デパート、家具店などの売り場を作っていくのは共通するやり方かもしれませんが、「新たに通販を始めよう」となると、まったく違うやり方であるため、今までにない気づきやチャンスが生じます。人生も同じ。心地のいい場所に居続けては可能性が広がりません。反対に、知らない世界に踏み出すと素直に学べるようになる。多様な人が集う学校という場には、そうした機会があると思います。アメリカに進出するも大型マットレスの輸送事故が多発しクレームが相次ぐ。予想外の事態に撤退を余儀なくされる。配送業者のせいにするのではなく失敗を素直に認める。分析の結果、現場の実態や市場に合っていなかったと判断。三分割にしたことで体形や好みに合わせた個別仕様化と配送料の抑制を実現。会社を代表する大ヒット商品につなげる。たかおか・もとくに●1960年愛知県生まれ。名古屋大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。スタンフォード大学大学院経済システム工学科修士課程修了。日本高圧電気 代表取締役社長(現取締役)在任中、伯父から中部化学機械製作所(現エアウィーヴ)を引き継ぎ事業転換。EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2016日本代表。2017年より現職。2022 OCT. Vol.44420そこで生まれた画期的アイデアが会社を救うアメリカ進出時の予期せぬ失敗体験。

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