キャリアガイダンスVol.444
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 本校には、全国制覇を目指す多くの強豪クラブがあります。また、選抜特進コースを中心に高い進学目標をもつ生徒も大勢います。一方、今すべきことは真面目に取り組むものの、目標を決めきれていない生徒もいます。そうした生徒が自分の未来をどう築いていけばいいか。そんなことを日々の生活のなかで考える機会を多く用意しています。例えば「報徳のことば」の素読。中1から高3生までがほぼ毎朝、本校の基盤である二宮尊徳先生の生き方や教えを学びます。音読して終わりではなく、先生方には「実社会で起きていることや、自分たちの生活に照らし合わせて生の言葉で語ってほしい」とお願いしています。 また、定期テストが終わるたび、今の自分に足りないものは何かなどの内省や、自己実現のために今、何をすべきかといった自分との向き合い方をタブレットに蓄積してもらっています。それらを振り返ることで生徒自身はもちろん、親や教師も成長を感じとることができる。そうしたこともICTがもたらす教育効果の一つだと実感しています。報徳学園中学校・高校412022 OCT. Vol.4441911年報徳実業学校設立。1919年二宮尊徳嫡孫の二宮尊親が二代目校長に就任。1952年現校名に改称。高校は「選抜特進コース」「特進コース」「進学コース」の3コース制。2018年に■金次郎STUDEO■という名の自習室を整備。専門のチューターが常駐し、「家庭学習の学校内完結」を目指す。2021年創立110周年を迎えた。 2021年に校長に就任した際、前任者や理事長から「新しい風を吹かせてほしい」と言われました。公立中学校で28年、教育行政に10年携わってきた経験を活かし、生徒自身に考えさせる教育や、目立たない子やしんどさを抱えている子に対する目配りもしていくつもりです。もっとも、私がどうこう言うまでもなく、報徳学園の先生は校風三則にある至誠・勤労そのままで、手抜きを知りません。ある教員は、分掌を移ったあとも時間の許す限り前年度の部署をサポートしています。二人の副校長や各部長も頼もしく、ある課題がもちあがっても、翌週の会議では解決策を提案してくれます。私の役目は、現場に耳を傾け、ミドルリーダーが手腕を発揮しやすいよう理事会や各部門とを調整することです。 学校周辺を自主的に掃除する生徒の姿も、報徳教育の芯である「感謝と貢献」そのもの。自分で考え、行動するのはクラブ活動も同じで、指導者の指示を待たずに活動しています。人は、人とのふれあいを通じて成長を実感するもの。多様な考え方、柔軟な対応ができる人間に育つには、仲間と過ごす時間が欠かせません。チーム力を発揮する機会は校内に無数にありますが、クラブ活動はその最たるものでしょう。働き方改革に伴う部活動のあり方が問われてはいますが、本校は、全人的な教育の場としてのクラブ活動も重要視していきます。一つのことに打ち込むことで培った力は学業にも活かされます。最後の大会で敗れたあるクラブのキャプテンはすぐさま校内の自習室にこもるようになりました。その自習室を覗くと、たまには寝ている生徒も目にします。「疲れてるんだな」と思いながら、たまに中に入ってポンと背中をたたくときに感じる体温や、飛び起き机に向かう真っすぐさに胸を打たれます。担任を外れて以降、生徒との関わり方は変わりましたが、教師冥利につきる瞬間です。もとだ・としゆき/1958年兵庫県生まれ。同志社大学工学部卒業。人権問題の解決には教育が鍵と考え教職を志望。中学校の数学科を選択したのは、数学嫌いな子をつくりたくなかったから。石工職人だった父の、「俺は石を積み上げ建物の土台を築いてきたが、お前は強い意志をもって子どもに接することで人を築け」という言葉にも影響を受け、ほぼ毎日を学校で過ごす。西宮市立中学校に計28年、市教委に計10年勤務し、西宮市立甲武中学校校長を最後に定年退職。2019年、報徳学園中学校・高校教育力向上担当参与。2021年4月より現職。まとめ/堀水潤一 撮影/山田紗基子尊徳先生の教えを基盤に日々の生活のなかで生き方を学ぶ(兵庫・私立)クラブ活動でのがんばりを次の目標達成につなげてほしい

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