キャリアガイダンスVol.444
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には、初任のころから抱いてきた思いがある。体育の授業を通して「みんなにスポーツを楽しんでほしい」という思いだ。 「体育の授業では、ともすれば運動好きの生徒だけが楽しみ、苦手な生徒は置き去りにされることがあります。一方で、苦手な生徒に合わせようとすると、運動好きの生徒が消化不良になることもあります。どういう授業であれば、全員にスポーツの楽しさを伝えていけるのか。それが自分の中の大きなテーマなんです」     「体を動かす楽しさ」「ゲームで競う楽しさ」などがあるが、体育の授業がそうした楽しさだけに偏ると「遊びの延長になってしまう」とも木村先生は考える。 「ただゲームをすると、運動に不慣れな生徒は何をすればいいかわからず、存分に動くこともできません。ですから体育の授業では、学ぶことで動き方のコツがつかめてくるなど、『自分ができるようになる楽しさ』も全員に伝えていきたいのです。生徒同士で教え合うなど、自分の関わりで『仲間ができるようになる楽しさ』も感じてほしい。そうしてスポーツを楽しいと思えるようになり、日常でも親しむようになって、生活をより豊かなも北海道釧路商業高校の木村宣子先生ではスポーツの楽しさとは何だろう。のにしてもらえたら、と思っています」自分や仲間が「できるようになる楽しさ」を体育の授業で追うことには、別のねらいもある。生徒の課題解決能力とコミュニケーション能力を高めることだ。 「本校には、考えることや、いろいろな人とコミュニケーションを取ることに、苦手意識をもつ生徒が少なくありません。ですが、与えられた課題をこなすのではなく、『自分で課題を見つけて解決策まで考える』、それも『一人ではなく、複数の人と意見を出し合い、さまざまな視点にふれながら考える』というのは、社会に出てからも必要な力だと思うのです」だから木村先生は、体育の授業で生徒にこんなスタンスを求めている。これからやるスポーツについて、自分たちの課題はどこにあるかをグループで考えよう。その課題を乗り越えるための練習方法や作戦も、みんなで話し合って考えよう、と。もっとも、生徒たちは最初からそこまで主体的に動けるわけではない。そこで次のように、高校3年間を通して、生徒自身で考える範囲を段階的に広げていく。1学年…取り組むスポーツの基礎技能を習得できるよう、木村先生が課題と練習方法を提示(図1参照)。課題のための練自分たちの成長を楽しむなかで課題解決能力を高めてほしい教員の指示を徐々に減らし生徒が考える幅を広げていく生徒に対する想い授業の実践好き嫌いが分かれやすい体育の授業で、生徒全員が自身の上達を実感し、スポーツの楽しさも感じていく。そうした授業を目指すことで、思考力やコミュニケーション能力も高めようとしている先生の実践をご紹介します。北海道釧路商業高校(北海道・道立)全員が楽しくて学びもある授業を目指したいです今号の先生保健体育木村宣子先生大学院修了後、地元北海道で高校の教員となり、浦河高校の勤務を経て、現任校に。前任校時代に、ダンスの研修を2年連続で受けて試行錯誤した経験が、その後の授業づくり全般に役立ったそう。自身は子どものころからハンドボールに親しみ、現在、ハンドボール部の顧問も務める。取材・文 松井大助撮影 勝山淳一2022 OCT. Vol.44456生徒を見取って授業をデザイン

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