食堂プロジェクトは、地域から注目され多くの取材を受けているほか、「高校生ボランティア・アワード2022」で大会委員長の「さだまさし賞」を受賞するなど、外部から高い評価を受けている。リーダーを務めた生徒たちの自己肯定感が高まり、成長していく姿を見たことで、2021年度からは、総合的な探究の時間にも食堂プロジェクトを取り入れ始めた。探究に組み入れることで2年生の普通科全生徒が課題に取り組むことになった。 「探究は地域課題に取り組む学校が多いですが、本校の生徒にとっては、より身近な校内課題から入ったほうが自分ごとにしやすいと考えました。食堂プロジェクトは校内課題として関心が高く、生徒が多様な得意を発揮できます」(泉谷校長) 「プロジェクトではリーダーに手を挙げられなかったけれど、本当はやりたかった生徒も多かったようで、そうした生徒たちにもチャンスを与えられる良い機会となりました」(森麻衣子先生)探究の授業とすることで、日常のな かにいかに課題を見つけられるか、問いの立て方の練習から始めている。 「校内課題には2年生で取り組みますが、1年生では〝日常を疑う〟をテーマに、当たり前だと思っていたことを疑問文に置き換えて問いづくりをしています。身近なところに課題が存在していることや、課題を自分ごととして考え、解決策を探る力を体系的に身につけてもらいたいと考えています」(兼島翼先生)リーダー経験者には、地域の人々や大学生との関わりで視野を広げ、自分のやりたいことを見つけた生徒も多い。取材時に偶然、食堂に手伝いに来ていた卒業生の一人の大下真里奈さんは、広報チームの活動に関わってくれた香川大学の学生の影響を受け、現在同学の創造工学部に進学。将来は地元の東かがわ市のブランディングに関わる仕事をしたいと考えているという。 「教員の役割は生徒と地域の接点をつくるなど、生徒たちの視野を広げてあげることです。好きなことの先に広がっている世界を知ると、生徒たちは自ら進んでどんどん動き始めます。自分の好きや興味から動くことで主体性を体感し、プロジェクト以外でも自ら動く力を身につけていきます」(泉谷校長)身近なこと、自分の関心ごとから始まったプロジェクトのなかで、生徒たちは一緒に活動する大人から直接地域課題を見聞きすることで、地域のことが自分ごとになっている。自分たちの食堂を良くしたいという思いが、地域や世の中を良くしたいという思いへと広がることで、将来の夢を見つけるきっかけになっているようだ。プロジェクトリーダーだった先輩に勧められて、2年生のときから自分もリーダーの一人として活動を始めました。食堂プロジェクトの魅力は希望すればチームを複数兼務したり、自由に活動できること。自分も総務や広報の活動に参加していました。例えば総務チームでは自分の発想で食堂の売上げを増やすために冷凍ジュースを仕入れて販売したり、広報チームではオープンスクールで食堂プロジェクトの宣伝をしたりしてきました。食堂プロジェクトがやりたくて入学を決めた中学生もいたと聞いて嬉しかったです!プロジェクトでは取材を受けたり、コンテストなどで発表する機会が多々あります。取材は月に2件くらい、発表は自分が担当したもので今までに10件以上経験しました。でも、最初のころは何をどのように話せばいいかわからずうまく伝えられていませんでした。失敗を通して、話す対象によって、相手の気持ちを考えて内容や話し方を変えていくとうまく伝わることに気づくことができました。例えば環境系のコンクールなら、我々の活動が環境に貢献する部分に重点を置いたり、オープンスクールなら中学生に親しんでもらえるように、明るく楽しそうに話すなどです。将来はゲーム業界で働きたいと思っていますが、食堂プロジェクトでの経験から、ゲーム業界で広報の仕事がしたいと考えるようになりました。好きなことを仕事で生かす方法を、プロジェクトのなかで見つけた感じです。総合型選抜で志望校に合格できたので、大学でさらに学びを深めたいと思います。校内課題から始まる探究にプロジェクトを組み込む教員は、生徒と地域をつなげ視野を広げるサポーター15自ら考案したオリジナルメニューや地域の野菜を、各地で開催されるマルシェで販売するマルシェチーム。アントレプレナーシップを育む高校事例2023 JAN. Vol.445(左)地域の生産者から規格外の野菜や廃棄される魚の部位などを引き受けて利用する、メニュー開発チーム。ハマチの中落ちが絶品ハンバーグになった。(右)畑チームは校内に畑を開墾し、大根やネギ、スイカなどを栽培。収穫物を食堂の食材として利用し、コストを下げる。(写真右から)2022年春の卒業生の伊澤未波さん、大下真里奈さん、奥谷菜々美さん1900年創立/普通科(単位制)/生徒数409名(男子212名、女子197名)、全日制(普通科、理数科)・定時制。食堂プロジェクトのほかに、献血ボランティア活動や虎丸ゼミなど生徒主体の活動を重視している。失敗も経験しながら、対象を考えて話す力がついた3年生 食堂プロジェクト代表 亀井遼樹さん
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