複数のアカウントでキャラを使いわけるなどSNSをうまく活用している子はいます。ただSNSのタイプによってはネガティブな情報が流れやすいものもあり、よくない影響を受けやすい面も確かにあるかなと。記事でメンタルコントロールを取り上げたときは、読者からの反響が多くて驚きました。あと、デジタルネイティブと呼ばれるだけあって画面から情報を得るスキルは本当に高い。例えば、ウェブオープンキャンパスの視聴中、動画配信を準備する教職員のふとした会話から仲の良さや校風を感じとったり、スライドのフォントの大きさなどから自分たち高校生への配慮を汲み取ったりと、大人がリアルな場で感じることを、ネット上でキャッチしているわけです。こうしたZ世代特有の環境はありますが、メディアで喧伝されるような問題意識が高く社交的な高校生は、ごく一部の目立つ層。なので世代で一括りにせず、これまで通り、一対一の関係で接し、こちらの思いも素直に伝えることが大切だと思います。むしろ、思いを汲み取る力は、総じて強いので。菅野学校でも「この学年は」など一括りにする言葉を使いがちですよね。そういう空気が強い組織では、個が集団に埋没しがち。なのでカタリバが実施するマイプロジェクトという探究学習で ― は、文字通り〝マイ〟を大切にしています。「あなたにしかない感性」や「あなただから感じる違和感」を大切にすることで探究は深まり、自分自身を見つめ直すことにもなりますから。私がそれを強く意識するようになったのは被災地での生徒の振る舞いでした。マイクを向けられたら「絆」、将来の夢は、という質問には「復興に貢献したい」が求められる答え。マイプロジェクトのテーマも、大人の願いが投影されたようなものが少なくありませんでした。でも聞くと本音は別のところにあるんです。絆という言葉が大嫌いと話す生徒もいました。これはマズい。もっと自分を出していいんだよ、と語りかける必要があると感じました。そうした高校生と接するうえで気をつけていることはありますか?仲井高校生にとって大人は、強い影響力をもっています。大人の何気ない発言や態度によって、言いたいことも言えなくなってしまう。なので私は、聞くことを大切にしています。自分を知ろうとしてくれない大人に、どんな言葉をかけられても響きはしませんから。菅野完璧に見えるロールモデルに高校生は親近感をもちにくいです。「この人にも失敗や苦労があって、今があるんだな」と知って初めて憧れは生じます。だからこそカタリバの活動で高校生と話す際には、挫折も含めた等身大の自分を高校生にぶつけます。学校の先生は構造上、正しいことを言うべきという立場になってしまいがちなので、もっとカッコ悪い部分を見せてもいいのではと感じます。仲井先生の影響力といえば、最近知ったことがあります。私は中高一貫校育ちで、そのまま系列の大学に上がるのが自然な進路だったんですが、「10年間同じ学校にいるってどうなのか」と疑問を抱き、他大学を受験したんです。猛反対していた親が受験を認めてくれたのは高3の11月でした。先日、父に「あれだけ反対してたのに、なぜ急に認めてくれたの?」と聞いたところ、「担任の先生に、『このままだと娘さんに一生恨まれますよ』と言われたから」と。それを聞いてまず感じたのは、先生の言葉って重みがあるんだなということ。そして、「あの先生、私の味方になってくれてたんだ」ということ。当時は「この先生、人に興味があるのかな」と思っていただけに、胸に刺さりました。菅野私の転機も高校時代でした。「進学校なんだし、部活なんてほどほどにやればいいんだよ」という空気が支配的ななか、「違うだろ。みんなで決めたんだからしっかりやろう」と口にできた体験です。ベンチ要員だった私に、顧問が「菅野、お前はどう思うんだ」と投げ先生の言葉の重みと選択することの重要性●出張授業カタリ場全国の高校生を対象に、学生のボランティアスタッフが中心となって約2時間本音で語り合う授業。ナナメの関係と呼ばれる大学生や社会人との対話や出会いを通して、価値観に気づいたり、新たな自分を発見したり、探究したいテーマを設定したりする。(2020年以降、新型コロナ感染拡大防止のため新規受付を休止中)●全国高校生マイプロジェクト身の回りの課題や関心をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通して学ぶ実践型探究学習プログラム。小さくても実際に行動を起こすアクションや、主体性を重視。カタリバ主催で毎年、「全国高校生マイプロジェクトアワード」を開催。●みんなのルールメイキングプロジェクト校則やルールに対して、生徒が主体となり、関係者との対話を重ね納得解をつくることを通して、課題発見、合意形成、意思決定する力を高める。2019年に2校から始まった取組だが、社会的な関心が高まり全国に広がる。経済産業省「未来の教室」実証事業。2023 APR. Vol.44618
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