特集は、インタビューで出会った一人の高校生の悩みがきっかけとなり、始まりました。「将来について考えると、夜も眠れないほど不安。でも考えるほどに周りの声が気になってしまって、それだったら早く決めてしまった方が楽かもと思った」Z世代やデジタルネイティブ世代と大きく括られることも多いなかで、彼・彼女たちのもつ、根っこの深い悩みを聞いたと感じました。デジタル情報にアクセスできる以前と以後では、私たちに日々入ってくる情報量や、情報との関わり方が大きく異なっているはずです。自分自身も一人の生活者として、声が大きな人や、正解らしき言葉にどうしても頼りたくなる気持ちも十分に理解ができます。実際に高校生たちからは、インフルエンサーと呼ばれる存在の話も多く聞こえてきます。一定の「正解」があった社会では、それで良かったのかもしれません。ただ、これからの社会、変化が激しいということは、選択の回数が増えるかもしれないということ。多様性が広がるということは、選択できる範囲が増えていくかもしれないということ。これからたくさんの大切な選択を繰り返していく世代だからこそ、日々の体験と共に自分に向き合う重要性が、より増していくのだと考えます。起こった出来事や出会った人、そこで感じたことを基に「自分のあり方」を考え続けていく。そして、ふと心がドキドキした瞬間に、そちらに向かって「選んでいける自分」であってほしい。本特集が、学校以外の側面も含め、先生方にとって、少しでもこれからの関わり方のヒントとなりましたら幸いです。赤土豪一(本誌編集長)卒業制作が完成したときのワンシーン。自分の中の虚無感と向き合い、もがき切った末に出会った修復士の仕事について、心のうちを自分の言葉で伝えようとする姿が描かれている。 大学で美術を学ぶ学生たちが、挫折や嫉妬を味わいながらも、それぞれのやり方、タイミングで自分の道を見つけていくというストーリー。生徒が、数年後の自分の姿を思い描いたり、何かに真剣に打ち込む姿に憧れを抱いたりするきっかけになるかも。本を読むのはちょっと重たいという気分のときや、本を読むのが苦手だという生徒でも、漫画なら気軽に手に取れる。 舞台は美大。周りの圧倒的な強み・個性に触れ、主人公は自分が「からっぽだ」と感じてしまいます。しかし、もともと細やかな作業が得意な彼は、偶然出会った修復士という仕事に心を惹かれていきます。キャリアへのリアルな心理変化が、注目ポイントです。ⓒ羽海野チカ/集英社シリーズ1冊目には、パン職人、新幹線運転士、研究者の3つの職業を収録。パン職人になろうと思ったものの行き詰まり、「どうしたらいいんだろう」とぐるぐると思い悩む様子が描かれている。 絵本作家の鈴木のりたけさんが、3名の社会人にインタビューし、それぞれが今の仕事に就くまでの半生をコミックで描いた読み物シリーズ。子どものころ好きだったもの、学生時代に教師からかけられた言葉、社会に出てからの挫折や紆余曲折など、きっかけや転機は人それぞれ。迷ったり悩んだり失敗したりしながら自分の道を歩む姿は、進路を考える高校生にもきっと響くはず。 本 普段なかなか聞く機会のない、今の仕事を見つけるまでのエピソードや影響を受けた人、言葉との出会いが細かく、じっくり描かれています。当たり前だけど忘れがちな、「しごとへの道」は一つではないというメッセージに、子どもだけでなく大人も勇気をもらえるような1冊です。2023 APR. Vol.44634羽海野チカ/集英社鈴木のりたけ/ブロンズ新社ふと自分の心がドキドキした方へ、選んでいける自分であってほしい。
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