キャリアガイダンスVol.446
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えた授業内容を導入することで、探究活動と教科学習との連動性を高めている。例えば、国語では『羅生門』を通じて貧困問題を考え、化学基礎では化学反応の量的関係と環境問題を考察するといった具合だ。 「探究活動では、教員もわからないことを生徒が自ら獲得し、『先生こうだよ』と教えてくれる。我々教員は、素直に『すごいね』と認めることができる。学びの主役は誰かを認識して謙虚になれる、良い機会だと思います」(鳥居先生)学びに落とし込むことを目指して、探究型授業をテーマに教員研修や公開授業を実施。教員アンケートでは、「学校全体で授業改善や指導力の向上に取り組んでいる」との回答が100%となった。 「教員が知識や考え方を教え込むのではなく、いかに生徒自身で考えるかを意識している」(進路指導部主任・細田正俊先生) 「教科の面白さや学問に向き合う姿勢も、授業のなかで伝えていきたい」(黒田先生)こうして多くの教員が前向きに授業改善に取り組むなか、総合的な探究の時間の活動に対する理解も広がっているという。では、そのなかで生徒たちはどう成長しているのだろうか。長崎東ルーブリックの22年度自己評価結果を見ると、WWL7の全項目において5月より12月に上位評価が多く、活動の進行とともに伸びが見られる。特に「協働性」の伸びが顕著で、12月実施時は1学年・2学年ともS評価が35%にのぼった。また、三菱みらい育成財団の助成事業のなかで実施した生徒の自己評価結果では、「主体性」「協働性」「探究性」「社会性」のいずれも全国平均を上回っている(図4)。特に「社会性」は全国平均と30ポイント以上、「主体性」は20ポイント以上高い。自ら学校外に飛び出し主体的に活動してきたことで、こうした力に対する自信をつけた様子がうかがえる。 「単に好きだったことも、突き詰めていくことで専門家も認める内容になりえる。元は人前に出るタイプではなかったとしても、堂々と自分の考えを発表する力になるようです」(樫本先生) 「入学当初は周囲のレベルの高さに気後れしている生徒もいるのですが、探究活動で自己肯定感を高め、リーダー的存在になる例も少なくありません」(鳥居先生)活動は着実に軌道に乗ってきた。新年度の課題は、7月に控えた高校生国際平和会議を生徒自身の手で成功させること、探究型授業への改善をさらに進めること、そして、探究活動における生徒の3年間のWWL事業への取組で、探究自走化の推進だという。生徒の自走化の一施策として、探究ピア・サポートの体系化にも取り組む計画だ。 「昨年、中3の探究活動に助言や激励を行ってくれる高2生を募ったら、中3の生徒数120人を上回る200人が来てくれました。嬉しかったですね。新年度は年度計画にピア・サポートの時間を組み込み、先輩・後輩の関係性も活かして生徒の自走化をさらに進めていきます」(鳥居先生)今後も、探究活動を軸に、生徒が主役となる学校づくりを進めていく同校。教員もまた「ともによき世を創る」意識で、同僚性を発揮して取り組んでいくという。社会性や主体性に大きな自信をもつように生徒が主役となり自走する学校へ多様なタイプのメンバーと海洋ごみ啓発本を発行2学年の探究活動では、同級生の問題意識に触発されて、一緒に海洋ごみ削減のための活動に取り組みました。まずは海洋ごみ問題の存在を世の中の人に知らせることが大切ではないかと考え、自作の動画のSNS発信や国際会議での発表のほか、海洋教育サポート団体と共に啓発本の制作・発行も行いました。幼稚園の先生が買って読み聞かせをしてくださったなど、反響を聞いてとても嬉しかったです。メンバーの4人は文系・理系が混在していて、思考方法もばらばら。猛進型のメンバーが多いなかで、私はいつも冷静に現実的な意見を出す役割でした。いろんなタイプがごちゃ混ぜだったからこそ、ここまでの活動ができたのかなと思います。(3年生・筑紫莉里花さん/写真右)本当の謙虚さや行動力が身についた小さなころから世界を知ることに興味があり、グローバルな取組を行っているこの学校に中学から入学しました。高校では、グローバルな活動や国際交流イベントに積極的に参加しました。なかでも、アジアの高校生とチームを組んで日本の観光プランを練る国際大会に参加したことが印象に残っています。我先に発言する海外の高校生に圧倒されて、それまでの自分が心掛けていた謙虚さはちょっと違うんじゃないか、相手のことも考えたうえで自分の意見をちゃんと言うことが大事ではないか、と気づきました。また、先生方がいつも「なんでもやっちゃえ」と言ってくださることで、前向きな行動力が身についたと思います。(3年生・河原寛太さん/写真左)三菱みらい育成財団「心のエンジンを駆動させるプログラム」高校魅力化評価システム 組織診断ポートフォリオ※各資質・能力に関連する質問について肯定的な回答した人の割合2023 APR. Vol.446協働性探究性●長崎東 ●他地域平均筑紫さんが持つのは、探究活動で制作した海洋ごみ問題を考える本。右から開くと小さな子ども向けの絵本、左から開くと自分たちが行った活動の紹介になっている。      22年度は、探究をより幅広く日常的な図4 生徒の自己評価アンケート51主体性社会性

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