キャリアガイダンスVol.446
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の研究をヒントに、痛みのない注射針が開発されたように、異なる分野の融合によってイノベーションは生じます。自分とは違う専門性をもつ人とのコミュニケーションによって新しい発想が生まれることは誰しもが体感的に知るところでしょう。デジタル化は、そうした流れを加速させます。私が長年従事してきた自動車産業で言えば、例えばこれまで3年かけていた開発期間が1年を切るようになりました。ある部署から次の部署へとバトンを渡すような一方「KSUVSONDAY文×理×芸=展」「KSUプロジェクト型教育」を展開し向の作業であったものが、デジタル化によって各種の検討やシミュレーションが並行して行えるようになったからです。最後の最後に見える化されていた工程が、いきなり最初の方で現れることもあり、これまで以上に多岐にわたる部署との密接なコミュニケーションが欠かせなくなっています。こうした産業界における構造の変革にもかかわらず、一般に大学における研究者同士のコミュニケーションは多いとは言えません。そのため意識して交流の機会を設けてきました。例えば「研究シーズ発表会」や、その発展形として昨年初めての開催となったでは、分野を問わず多彩な研究成果を発表し、研究者同士、さらには行政や産業界の方々とも交流を深めています。互いを知り、切磋琢磨し合う集団になることを期待しています。本学ではまた約10年前から、商品開発やイベント開催などさまざまなプロジェクトを産学官連携で取り組むてきました。学部をまたいだプロジェクトも多いのですが、興味深いことに、文系と理工系の学生が「ああでもない、こうでもない」と議論しているのをよそに、芸術系の学生が独創的な成果物をまず形にすることがあります。それを起点に「なるほど、そんなこともできるのか」とメンバーの感性が刺激され、プロジェクトが一気に進むのです。実はこれも自動車業界の手法と似ています。というのも、モーターショーに出品するコンセプトカーは実際に販売する車種とは限りません。企画部門やデザイン部門が中心となり、こんな車があればいいな、といったあふれるアイデアを強調することで、市場やユーザーの心に訴えかけるのです。本学が今掲げている「文理芸融合のグローバル総合大学へ」というスローガンは、こうした考え方をベースにしています。文理融合ではなく、文理芸融合である点が重要なのです。具体的には、1年次から文理芸融合のクロス科目やコラボ講座を多数用意。学生間や教員同士の交流を活性化し、互いにインスパイアし、感性を磨き合う関係を築いてほしいと考えています。昨年度スタートした「AI・データサイエンス副専攻」や、今年度新設した、食を通じて世界を結ぶ「グローバル・フードビジネス・プログラム」も文理芸融合を強く意識しています。「産学一如」を建学の理想とし、実践的な学びを重視してきた本学の新たな取り組みに注目してください。 II     蚊55学長プロフィール きたじま・みさよし●九州芸術工科大学(現 九州大学)芸術工学部卒業。1973年日産自動車入社。デザイン本部カラーデザイン部部長、企画デザイン部部長、デザイン戦略室室長などを歴任。2003年九州産業大学芸術学部教授。同大学キャリア支援センター所長、芸術学部長兼美術館長などを経て2021年4月より現職。大学プロフィール1960年創立。国際文化学部、人間科学部、経済学部、商学部、地域共創学部、理工学部、生命科学部、建築都市工学部、芸術学部、造形短期大学部の10学部22学科に加え、大学院5研究科を擁する。福岡県福岡市。2023 APR. Vol.446まとめ/堀水潤一 撮影/Kenzo Hara

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