2取材・文/伊藤敬太郎 イラスト/ミヤザキコウヘイVol.446 別冊特集 AIやビッグデータなどテクノロジーによる産業の大変革である「第4次産業革命」、それらがもたらす新しい社会を意味する「Society5.0」。さらに、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取って未来の予測が難しいことを表現した「VUCA」。これら時代のキーワードに象徴されるように、今、社会および、人々の価値観は大きな変化の時代に足を踏み入れている。この変化は世界レベルで起きているもので、不可逆だ。 もちろん、社会はこれまでも常に進化・発展を続けてきたが、今の状況は、それらの部分的な進化や段階的な発展とは様相が異なる。この変化は、人々の価値観を根本から覆すようなパラダイムシフトであり、そのため、今までのやり方が通用しないという事態がさまざまな分野で起きている。 このパラダイムシフトへの対応は多くの分野・業界で大きな課題となっている。なかでも教育の分野は、変化の時代に対応できる人材、次世代を切り拓く人材を育成する重大な役割を担いつつ、同時に“教える側”である教師にもパラダイムシフトが求められている点で、課題はより大きいといえる。 文部科学省中央教育審議会は、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」において、今、教育の世界が直面している課題と新しい動きについて整理している(図1)。社会のあり方が劇的に変わる「Society5.0時代」が到来するのと同時に、新型コロナウイルスの感染拡大など先行き不透明な「予測困難な時代」に突入するなか、この変化に対応していくためにはどのような教育が求められるのか。また、特別支援教育を受ける児童生徒や外国人児童生徒の増加、貧困、いじめ問題に悩む児童生徒、不登校児童生徒数の増加などの子どもの多様化、教員の負担増に対してはどのような対応が求められるのか。これらの課題に対応するため、横断的・総合的な学びを重視した「生きる力」を育成する教育改革、ICT教育を進めるGIGAスクール構想の推進、学校の働き方改革など、教育の仕組みを変える試みが進められている。 では、そのような環境変化のなかで、今、個々の教師にはどのような資質や能力が求められるようになっているのだろうか。将来の職業として教師を目指す今の高校生はこれからどのような力を養っていけばいいのだろうか。 中教審が2021年に発表した資料「教師に求められる資質教育現場の課題と新しい動き図1GIGAスクール構想学校の働き方改革社会の在り方が劇的に変わる「Society5.0時代」の到来不登校児童の増加など「子供の多様化」ICT教育を推進教員の負担軽減直面する課題新たな動き「予測困難な時代」横断的・総合的な学びを重視した「生きる力」育成今、社会が大きく変わろうとしているのは、多くの学校の先生も実感しているところだろう。教育の世界も変化の真っ只中にあり、今後も激しい変化の時代は続いていく。そんな次世代の教師像とはどのようなものなのか。次世代の教師を育成するには何が重要になるのか。国立教育政策研究所 銀島 文氏の話を交えて解説する。新型コロナウィルス対応など先行き不透明な新指導要領
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