ベテラン段階より広い視野で役割を果たす時期中堅段階専門性を高め、連携・協働を深める時期1〜数年目教職の基礎を固める時期養成期段階 「学び続ける教師」の基礎力を身につける時期指導力…人権意識、コミュニケーション力、ファシリテーション力…責任感、使命感、教育的愛情…Vol.446 別冊特集3能力の再整理」では、教師に求められる資質・能力として、①使命感や責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力、ファシリテーション能力、②情報活用能力、データリテラシーの向上、③変化を前向きに受け止め、求められる知識・技能を意識し、継続的に新しい知識・技能を学び続けていくこと、④多様な知識・経験を持つ人材との連携の強化、の4つが挙げられている。 このうち、③の「変化に対応して学び続ける力」は極めて重要なポイントだ。「教員養成等の在り方に関する調査研究」などのプロジェクト研究に参加した経験をもつ国立教育政策研究所の銀島 文氏は次のように語る。 「変化が激しく予測不能なこれからの時代には、誰にも正解はわかりません。ですから、先生もすべてを知っている必要はないんです。一方で、今は、自ら知ろうと思えばいろいろな情報に手軽にアクセスできます。YouTubeなどの動画で専門的なことを学ぶことだって可能ですよね。子どもと一緒に、新しい課題に取り組み、一緒に学ぶことが大切なんです。それこそが、今、必要とされている主体的・協働的に課題を解決する力にもつながっていきます」 前述のように、探究学習など、横断的・総合的な教育が求められるようになっている今、教師に求められる知識の幅も広がっているように感じられる。しかし、一人の教員が担当教科の枠を超えて幅広い知識を身につけることには限界がある。銀島氏の言葉にある通り、すべてを知っている必要はない。むしろ重要なのは、社会のさまざまなことに関心をもち、自ら興味を抱いて学び続ける力だ。 そのように自分の専門領域外にも広く目を向けると同時に、教育全般や教科教育についても、自分自身で深く探究していくことが、一方では、教師としての専門能力を磨くことになると銀島氏は語る。 「例えば、数学の先生は、公式を伝えることだけが仕事ではありません。『この公式は何のために必要なのか』『この理論を学ぶ理由は何なのか』といった本質的な部分を子どもたちに伝えていくことも大切な役割です。そのためには先生自身がまず教科の内容に関して、『何のためにやるのか』を深く考えることが大切です」 このように教育や教科の本質を問う思考を重ねていくことは、教師としての専門性を養うと同時に、改めて学ぶ楽しさを自ら体感することにもつながる。教師自身が学ぶ楽しさを知っているからこそ、子どもたちにもそれを伝えることができる。アクティブ・ラーニングや探究学習などにおいて、子どもが主体的に学ぼうとする意欲を喚起するためには、マニュアル的なテクニックよりも、そのような教師自身の学びに向かう姿勢が重要になると銀島氏は語る。 今後、GIGAスクール構想が進み、デジタル教材の活用なども広がるなかで、②で示した情報活用能力やデータリテラシーも、養成段階である程度身につけることが当然重要になるだろう。しかし、テクノロジーの進化は日進月歩だ。常に新しいテクノロジーやツールが生まれてくるため、それらを授業などでどう活用するかを教師自身がそのつど考えることが必要になる。つまり、ここでも「学び続ける力」が鍵を握ることになる。 ここまで説明してきたように、養成期段階や若手の時期はもちろん、中堅、ベテランになっても「学び続ける」のがこれからの教師のキャリアイメージだ(図2)。では、教育学部などで学ぶ養成期段階では何を重点的に学んでおけばいいのだろうか。教科に関する専門知識、授業力、学校組織内におけるマネジメント能力など、教師としての専門能力は、養成期段階でも当然基礎を学ぶことになるが、これらの要素は現場で経験を重ねながら磨かれていく余地も大きい。学び続ける力が備わっていれば、キャリアを重ねながら磨いていくことが可能だ。一方、「教職に対する情熱」や「総合的な人間力」は、前述の「教師に求められる資質・能力」でいうと、①に相当する教師としての土台と「学び続ける教師」のキャリアイメージ図2教育の専門家としての力量専門分野の知識、授業力、総合的な人間力教職に対する情熱
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