キャリアガイダンスVol.447
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   もし私の仕事を「接客してコーヒーをお出しすること」だと考えるなら、わざわざ英語を学ぼうとは思わなかったかもしれません。スペシャルティコーヒーを提供するこのお店で働き始めたのは、2年前のこと。秋葉原に近い土地柄、お店には海外からのお客様がたくさんいらっしゃいます。もともと英語は苦手でしたが、メニューを指差しながら最低限のやりとりをする程度なら私にもできました。ところが、次第にジレンマを感じるようになりました。私たちのお店では、孤独を感じやすい社会のなかで、接客する側・される側のドライな関係を超えて、まるで友達のようなつながりをお客様と築くことを目指しています。でも、あと一歩コミュニケーションを深めたいところで、いつも言葉の壁が立ちはだかる。もし相手が友達なら「昨日はどこか観光に行った?」などと自然に聞くだろうに、その一言が出ない。たとえ聞けても、相手から返ってくる言葉が聞き取れないから、そのあとの会話が続きません。お客様と友達になることを目指すのなら、「ちょっとした友達同士の会話」ができるくらいには英語を話せるようになりたい。そんな気持ちが芽生えたものの、初めのころは英語学習の本を買うだけで満足し、身につかない日々が続きました。そこで「明日からお店で使えるような、日常的な話し方や表現を学ぼう」と考え、英語圏のユーチューバーの雑談動画を見たり、「めっちゃ〜だね」「マジで?」など日常会話でよく出てくるような言い回しを学んだりすることに。覚えた表現をお店で使ってみて「これは伝わらないんだ」と学ぶことも。とにかく実践を「あと一歩」が聞けないもどかしさが学びを後押し他者や異なる文化を知る、キャリアを広げる、選択肢を得る、自分に気づく…。他言語を習得することで世界につながる「扉」を開けた人たちは、扉の向こうにどのような景色を見たのでしょうか。異なる動機から他言語を学んだ6名のストーリーをお届けします。〝あなた〟をほんの少し知りたい。その言葉を待っている人がいた取材・文/塚田智恵美(14〜15、19〜20ページ) 、藤崎雅子(16〜18、21ページ) 撮影/吉永智彦(14〜15、18ページ) 、姉川友香(16ページ) 、山内城司(19ページ) 、田崎真亜人(21ページ) 2023 JUL. Vol.44714あの人が他言語を学ぶ理由「そ言の葉向」のこうカギにである開もくの扉、

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