キャリアガイダンスVol.447
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重ねました。せっかくの出会いをただ流すのではなく、2言、3言の会話のなかからでも〝あなたという人間〟を少し知ってみたい。そんな気持ちが、私の根っこにあったのかもしれません。英語という言葉を得ることで、海外の方とも一歩踏み込んだ会話ができるようになりました。無難に接客をするだけなら必要のない、ちょっとした相手への興味――例えば漢字Tシャツを着ている方がいたら「なんでその漢字を選んだんだろう?」、日本のアニメのグッズを持っている方がいたら「この人、アニメが好きなのかな?」といったことを、聞けるようになった。すると、ちょっとした会話のラリーから、その人の素顔が見えるような瞬間があるのです。そしてわかったのは、日本人と話     したくて仕方がないとうずうずしている外国人がとても多いこと。シャイな人も多い日本人から街中で話しかけられることはほとんどなく、ホテルや観光地でも事務的な会話にとどまることが多いのでしょう。だから、私が拙い英語で「今日は何してたの?」と〝あなたについて〟問いかけるだけで、待ってましたと言わんばかりの勢いで、お話をしてくれる方がたくさんいました。お店のクチコミに、海外の方が「ここには英語で話せるミキがいるよ」と書いてくれたこともありました。私のような拙い英語で「話せる」と言っていいのかしら、と照れましたが、たとえ片言でも「話そう」とする姿勢が伝わったのかもしれません。気づいたら英語での会話が少しずつ続くようになって、日本に滞在している間は毎日お店におしゃべりしに来てくれる方や、一緒にご飯を食べに行くほど仲良くなった方もいました。一歩深く関わろうと試行錯誤しているうちに、本当に「友達」になれたのです。だいぶ英語を話せるようになってから、英語学習の本を改めて開いたとき、「注文するときの正しい英語はどれでしょう?」という問題を見つけました。選択肢を見て「あれ?」と思った。私は海外の方から毎日英語で注文を受けているのに、その問題の正解がわからなかったのです。むしろ、そこに書かれている選択肢はどれも、実際に使う表現とは微妙に異なるように見えました。考えてみれば、人によって、よく使う言葉や省略する言葉、訛りや言い方は異なるもの。人も、言葉も、それぞれ違って、生きている。学習本はあくまでも基礎であって、その外には人の数だけ英語の「正解」がたくさんある。そう思うと私は一層、さまざまな人と出会い、友達になることが面白く感じられるのです。学習本の外には英語の「正解」がたくさんある15KIELO COFFEEを訪れたお客様と。何気ない会話を楽しみに何度も訪れて、親しくなる方が多いという。会話からそれぞれに異なるバックボーンを知ると「“海外からのお客様”とは一括りにできない」と鈴木さん(写真は本人提供)。つながるための「言葉」を獲得する2023 JUL. Vol.447専門学校でバリスタの技術を学び、卒業後はコーヒーの輸入・販売を行う会社に就職。2021年、「孤独の解消」をビジョンに掲げるKIELO COFFEE(秋葉原)に転職し、店長に。海外のお客様との会話を深められないことにジレンマを感じた。「今日は何してた?」あなたを知りたい気持ちが伝わり、友達に。少し気になったことを聞いてみると、その人の素顔が見える瞬間。バリスタ鈴木美樹さんKIELO COFFEE 店長#学びのキッカケ#変化・気づき#楽しさ・喜び

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