キャリアガイダンスVol.447
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よく、「英語はあくまでツール」と言われます。「大切なのは、英語を使って何をするか」ということなのはわかりますが、個人的には少し引っかかるフレーズです。言語とは単なる道具やスキルではなく、もっと奥深いもの。思考や感情を紡ぎ、人と人との絆を深めるものだと考えているからです。実際、外国語に触れると、日本人同士の会話では発想し得ないことも含め、さまざまな意見に出合います。特に英語は、話者の数も人種も多く、発信される情報量が桁違いであるため、多種多様な側面から物事に触れることになり、思考を深めることができます。これが私が思う、言語を学ぶ一つ目の意義です。もう一つの意義は、他者との関係性を築き、つながるために必要な媒介だということです。それについて述べる前に、「つながる」とはどういうことか、私の専門であるコミュニケーション学の立場から補足させてください。コ      ミュニケーションとは「とる」ものではなく、「ある」もの、という捉え方です。例えば、私の講義中、前の席に座る学生は熱心に耳を傾け、ときおり質問もする一方、後ろの席の学生はスマホをいじっているとします。そのとき私は前の席の学生とだけつながっているかといえば、そんなことはありません。後ろの席の学生も、スマホを使うという行為を通して「授業内容が難しすぎかな」「やめるよう注意すべきかな」と私に考えさせるなど、影響を与えているからです。つまり、ある空間を誰かと共有している限り、意識的・無意識的にかかわらず、また浅い・深いという程度の差はあっても、そこに関係性は存在しているのです。その意味では、あなたが外国コミュニケーションとはそこに「ある」もの東京国際大学言語コミュニケーション学部教授松本茂さん言語によって思考は深まり、人と人との関係は築かれるまつもと・しげる●1955年生まれ。専門はコミュニケーション教育学。マサチューセッツ大学ディベートコーチ、東海大学教授、立教大学教授(現名誉教授)などを経て2021年4月より現職。『おとなの基礎英語』ほかNHK番組(Eテレ、ラジオ)への出演多数。現在『中学生の基礎英語レベル2』講師。全国高校英語ディベート連盟(HEnDA)副理事長。東京都英語村(TGG)プログラム監修者。NHK英会話番組の講師を長く務め、コミュニケーション教育の専門家である松本 茂教授と25の言語を駆使し世界の辺境を巡るノンフィクション作家の高野秀行さんに伺いました。言語の本質とは、語学がもたらすものは何か。他言語が紡ぐ「世界とのつながり」

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