キャリアガイダンスVol.447
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 学校の生命線は授業です。授業力を磨くため、2018年から3年かけて、外部の専門家による「第三者授業診断」を実施しました。一般的に「ぜひ自分の授業を見てほしい」という積極的な先生は少数で、大半は抵抗感を覚えるものですが、終えてみると一様に満足気。改善点の指摘が的を射ているうえ、良いところも多く挙げてもらい、自信につながりました。 その経験を活かし、これまで続けてきた授業見学を、教科や学年の枠を外して行うことにしました。同じ教科の授業だと、細かな点に目が行きがちですが、他教科の場合、生徒との距離感や信頼関係のつくり方など、より客観的に見ることができ気づきも多いのです。 生徒による無記名の授業アンケートも実施しています。本校の生徒は優しく、辛辣な意見は少数ですが、自由記述の中にはハッとする指摘もあります。例えば、「小テスト中、『問3は簡単だぞ』という口癖を止めてほしい。間違えたら恥ずかしいから」というもの。教員としては「難しく考えなくていいぞ」というアドバイスのつもりが、生徒にとっては余計なプレッ浦和実業学園中学校・高校352023 JUL. Vol.4471946年創立。建学の精神「実学に勤め徳を養う」に則った教育活動を実践。普通科5コース(特進選抜、特進、選抜α、選抜、進学)、商業科2コース(プログレス、キャリアアップ)に加え、中高一貫部を設置。2022年に4つの理科実験室と5つのPCルームを有する新2号館が完成。翌2023年には、カフェテリアや図書室ほかラーニングコモンズとしてのスペースを備えた新1号館が竣工。シャーになっていたのです。 毎年春には授業参観も行っています。高校、しかも生徒数が2500人を超える大規模校での実施は大変ですが、これも授業第一の表れと捉えています。 本校の伝統行事に、高校2年生全員参加のハワイ短期留学があります。滞在先は、日本語がほとんど通じないハワイ島の学園施設。伝えたいことがネイティブに伝わったときの喜びを感じてほしいし、朝晩の自炊を含む約2週間の共同生活を通じて自立心や協調性も養ってほしい。実際、自学自習の意欲が高まり難関資格に合格した商業科の生徒もいます。 国語の教員として強調したいのは、言葉のもつ力についてです。校長就任後、折に触れ、「前向きな言葉を大切に、美しい言葉を使ってほしい。『どうせ』とか『だって』という言葉を使っていると行動も後ろ向きになる」とか、「コミュニケーション力とは、他者の気持ちを想像できる力」などと伝えています。良くも悪くも、言葉は人の心に強い影響を与えるもの。だから先生方にも「生徒に積極的に声を掛けて」と言い続けています。 本校には、「声」だけではなく「文字」を使って、教員と生徒とが交流してきた歴史もあります。「スクールライフ」という交換日記のようなノートに、生徒は日々感じたことを書き留め、定期的に提出。担任が赤ペンでコメントを書いて戻します。多くのデジタルツールを活用している一方、こうしたアナログにもこだわるのは、手書きの文章を書く習慣をつけてほしいことに加え、人間の存在自体がアナログだと考えているからです。帰りの電車内。ある生徒が、鞄からスクールライフをそっと取り出し、周りに見られないよう覗き込んで、嬉しそうに微笑んでいる姿を目にしたことがあります。担任のコメントがびっしり書き込まれた3冊のノートは一生の宝物。そう話す卒業生は少なくありません。おかだ・しんいち/1962年生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、浦和実業学園高校 国語科非常勤講師に。学年主任、進路指導主任、中高一貫部教頭、高校普通科教頭、副校長を経て、2023年より現職。その間、特進コース設置(1989年)や中高一貫部設置(2005年)などで主導的役割を果たす。特進コース1期生とは一体感を築きつつ、考える力や自立心を促すため適切な距離を置くことを意識。中高一貫部設置時は寝食を忘れて働くも、今はそうしたことを美談とせず働き方改革に留意。寄り添いを軸としたマネジメントに。モットーは情熱と研究心。まとめ/堀水潤一 撮影/吉永智彦第三者授業診断など授業力向上に全校で取り組む(埼玉・私立)アナログツールにこだわるのは人間の存在自体アナログだから

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