施農工高校。2010年に農業高校と工業高校の再編統合によって誕生し、農業系の生物生産科、食品科学科、都市緑地科、および工業系の機械制御科の4学科を設置する専門高校だ。23年度入試では同校生物生産科の志願倍率が県内トップの2・3倍、ほかの3学科もすべて全日制平均以上と勢いがある。約6割が就職で、地元に残る者も多い。人口減少によって農業や製造業の人手不足が深刻化する周辺地域からは、同校の人材育成に大きな期待が寄せられている。そこで、地域を支える人材を地域と共に育てていこうと、同校は18年度にコミュニティ・スクールの仕組みを導入した。さらに19年度から3年間の文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(プロフェッショナル型)」を活用し、新たな地域協働カリキュラムづくりとして「田布施あい3(キュービック)プロジェクト」を立ち上げた。そのねらいについて、専門部長の松本純治先生はこう振り返る。 「それまでの地域連携は教員の属人的な取組も多く、転勤によって関係性が途切れてしまうケースが少なくありませんでした。また、地域の皆さんとの学びを、地域課題を解決する探究的な学びへと発展させることも課題でした。地域連携を一歩進め、持続可能な活動にするために、学校山口県南東部ののどかな町にある田布生徒の卒業後の進路は約4割が進学、を挙げての組織的な仕組みづくりが重要だったのです」同校の生徒について、教員は口を揃えて「素直で明るい」と話す。一方で、学習意欲や基礎学力の向上、異なる考えをもつ相手とのコミュニケーションには課題感もあるという。そうした生徒の実態を踏まえ、あい3プロジェクトでは「幅広い知識・技術」「創造力」「他者と協働して課題解決する力」を備える人材像の育成を目指している(図1)。取組の軸となるのは、地域課題の解決だ。従来より主に3年次に専門科目の「課題研究」があるが、「どんな課題研究をしようかと思っているうちに卒業になってしまい、活動を深めることが難しかった」と宗正いぶき先生。そこで、1年次から地域課題に触れ、段階的に活動を積み上げていく3年間のプログラムを構築したという。各年次の活動には、「Eye」「I」「愛」という3つの「あい」がある(図2)。まず、「Eye(見る)」を掲げる1年次では、「産業基礎」(総合的な探究の時間)においてさまざまな方法で地域を見て課題の発見を目指す。前半に他学科をローテーションして学習し、専門分野以外の多様な分野からも課題解決の手法を知り、学科を越えて連携して課題に取り組む視点を養うのがねらいだ。後半は、それぞれの学科に戻って、田布施町の魅力や課題、伝統・文化について、フィールドワークや持続可能な地域連携による探究活動の充実を目指して3つの「あい」を育む3年間のプログラムを実践取材・文/藤崎雅子 2023 JUL. Vol.44748地域と共に人材育成を図る「田布施あい3(キュービック)プロジェクト」を立ち上げました。総合的な探究の時間 課題研究 学科・教科を越えて取り組む探究地域コンソーシアム 生徒が推進する地域連携農業科と工業科をもつ田布施農工高校は、2019年、その特長的な推進方法と、それによる生徒の成長の様子をご紹介します。
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