キャリアガイダンスVol.448
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うだな」とモヤっとしたら、とにかく書いたり話したりして吐き出す。そこで出てきた言葉を丁寧に深掘ることで、「ああ、自分ってこういうことを思っていたんだ」と認識できる。そうやって内面的な思考や感情を言語化・深化することで、物事を見る視点や価値観を自分のものにしてきた感覚があります。振り返ると、幼いころからノートにあれこれと書くのが好きでした。レシピや面白かった本のリストが、いつしか「人生で大事にしたい10箇条」のような内面的なものになっていって。自分の思考を整理するために言葉を書き連ねた「自己分析ノート」は、40〜50冊ほどになります。自分の考えていること、感じていることを、どこかの誰かに伝えたい、誰かにわかってほしい、そして、それに対するフィードバックが欲しい。そう考えるようになり、中学2年生の時にツイッター(現・X)を始めました。自分の中だけで完結していた自己分析ノートとは違う、新しい表現の場を求めたのだと思います。当時は、将来の自分や社会に対する考えを、直接周りに共有することに抵抗がありました。言ってもわかってもらえないという諦めに近葉にすることは、認識すること。私はそう考えています。「自分の中に何かありそい思いを抱える一方で、自分の言葉をわかってくれる人がどこかにいるはずだという期待もあって。ツイッター上では自由になれたというか、自分が本当に言いたいことを発信することができ、あるがままの自分でいられました。高校3年生の時にWEBで公開した「この割れ切った世界の片隅で」という文章が、誰かに読んでほしいと願って書いた、初めての長文です。社会の分断の根っこにある「その存在にさえ気づかないこと」について書いたもので、大きな反響がありました。身近な友達に伝えても伝えても伝わり切らないもどかしさを抱えていた私にとって、「誰かの心に響いた、わかってもらえた」という確かな手応えを感じられたことは、大きな喜びでした。今、私は、東京・高円寺の銭湯「小     言杉湯」で働いています。初めて訪れた時に、心から信頼できる場所だと大好きになってしまって。小杉湯を誰かの大切な場所にするお手伝いがしたい、小杉湯のことが好きな方がより信頼できる場にしたい。そんな思いで、記事や環境整備のポップを手がけています。私にとって言葉は、どこかの誰かの意識や行動を変えたり、心を動かしたりするための手段でもあります。自分の言葉で、社会をほんの少しでも良くしたい。それが今の私のWILLです。山邊鈴さん山邊さんが初めて小杉湯を訪れた際に一目惚れしたというメイクカウンターのポップ。「小杉湯は、お客さん一人ひとりのことが、近すぎず遠すぎず絶妙な距離で見えている場」と言います。やまべ・りん●長崎県諫早市生まれ。中学生のころから格差や貧困に関心をもち、学生団体の設立や途上国への取材活動を行う。分断への危機感から執筆した文章「この割れ切った世界の片隅で」をきっかけに注目を集める。2021年秋にアメリカのウェルズリー・カレッジに進学。現在は休学し、学生企画チームの一員として、東京・高円寺の銭湯「小杉湯」で働いている。「この割れ切った世界の片隅で」https://note.com/__carpediem___/n/nba61eb70085a2023 OCT. Vol.44812言葉にすると、自分の輪郭が見えてくる。深く掘り下げた先に、伝えたい思いがある

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