キャリアガイダンスVol.448
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れの価値観を築いていることがよくわかった。夏という言葉からポジティブな経験や感情を連想した人は「友達と一緒に過ごす時間が何より大切だ」という価値観をもっていたり、ネガティブな経験や感情を連想した人は「せっかくの自由な時間に、膨大な量の宿題をするのはもったいないことだ」などという価値観を抱いていたりする。書いたものを発表し合って驚いたのは、それぞれのルーツや住んでいる地域によって、「夏」という言葉でイメージする光景がまったく異なったことだ。京都に住んだことのある人が、盆地ならではの厳しい暑さにさらされた経験を語った一方で、北海道在住の人たちは「夏とは、短くて、すぐに通りすぎてしまうもの」と言う。その地域に昔から根付くお祭りの光景や、身体で感じた熱が呼び起こされる、という人もいる。それぞれの経験によって「夏」という言葉がはらむ情景が、鮮やかに変わる。「夏」のほか「ノート」というテーマでも同じワークをやってみた。自分の経験や感情は言葉にできても、価値観を言語化するのが難しかった様子の高校生たち。「夏は夏だし、ノートはノート。どちらも生活に溶け込んでいて、当たり前になりすぎている言葉だから、改めて自分が考えていることを言語化するのは難しかった。こうして書いてみると、その言葉の背景がみんな違って面白い」と語る高校生。書いたものをみんなで共有してみると、似たような経験でも意味づけが異なるなど、他者と自分の認知の違いが明らかになる。「まるで、言葉一つひとつの意味を解き明かしていくみたいだ」と話した高校生もいた。言葉の裏にあるストーリーを解き明かしていく作業 「身近なもので、特に強い不満を抱いたこともないから、ノートについて改めて考えるのは難しい」と語る高校生。ノートに書いたときの「自分の字が汚くて悲しい」経験が思い浮かんだ、鈴田さん。こうした経験が影響しているからか、あまり積極的にノートを使わないし、何を書けばいいのかわからないのだという。しかし、書き始めるといろいろな経験が出てくる。日頃から、気になる言葉を書き留めている高校生も多かった。ノートに書き出すことを「自分の時間を有意義に使えた気がして、嬉しい」と表現した北畑さん。知らない言葉を見つけると、意味を調べてノートに書くのが習慣だと話し、びっしり文字が書かれたノートを見せてくれた。2023 OCT. Vol.44816

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