「もやもや」を形成している思いとは。高校生の声を聞くワークでは、言葉の裏で、それぞれのものの見方が形成されていることについて目を向けることができた。ここからは日常で「言葉にすること」をどう捉えているか、リアルな声を聞いてみることに。まず高校生たちからあがったのが、 SNSでの誹謗中傷について。「コメント欄を見ていると、どんな発言も、捉え方次第ではネガティブに受け取られてしまうと感じる。そのことを考えると、自分の内側で生じた気持ちを言葉にすること自体をためらってしまうときがある。気持ちを言語化することよりも、言葉に〝しすぎる〟ことに、むしろ気をつけているくらい」と一人の高校生が語ると、他の高校生も「傷つけるような言葉を言わないように、と敏感になると、深く考えすぎて言葉が出てこなくなる」と共感。ある高校生はこう語る。「世代によってダメな言葉が違うのが難しい。親は私が使うギャル語のような言葉を聞いて『日本語が崩れている』と指摘してくるが、親がよく言う『女の子らしく』という言葉は、今の時代ではもうダメだと思う。世代によって、いい言葉、ダメな言葉が違うので、この言葉はいいんだっけ、といちいち考えてしまう」。毎日のように誰かが炎上する時代で、言葉選びに慎重にならざるをえない事情も見えてきた。SNSなどを通じて自分の考えをシェアするのが当たり前な昨今だが、座談会では「あえて『言葉にしたくない』瞬間もある」という意見が高校生から出る。「本当にすごいものを見たとき『すごい』としか表現できないことがある。推しのアイドルについて、どれだけうまい表現や素晴らしい語彙で表現された文章を見ても『そうじゃないんだよなあ』としっくりこない」と話す高校生。また「すごく感動しているときは、今、自分の気持ちを言17「私にしか言えない言葉」2023 OCT. Vol.448
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