うまく言葉になる瞬間がある。その言葉を知っていても、自分の言いたいことと結びつかない、気づけないケースが多い」と話した。「本を読んでいて、ある言葉の意味が真に腑に落ちると、自分でも使えるようになる」と語った高校生もいる。言葉を学び、言葉の意味が納得できると、自分でも使えるようになる。「教科書を読んでいたら、何とも言葉にできない不完全燃焼感を『やるせない』と表現していて、ああ、自分のもっていた感情は『やるせない』だったんだ、とつながった経験があった」と語る高校生も。これに大人からは「そもそもオリジナルの言葉なんてものは存在しない。いろんな人たちの言葉を浴びながら、自分の中に残った言葉を駆使して、思いを表現している」と同調の声があがる。「食べ物と排泄物の関係のように、『入れる・出す』の循環の中で自分ら「例えば『普通』という言葉の意味はわかるけど、何が『普通』にあたるのか、私には理解ができなかった。それが、小説の中で『いっぱいあるから普通なんだよ』という表現がでてきて、初めて『普通』という言葉の意味が理解できたような気がした」しい言葉が生成されていくのではないか」との指摘に、聞き入る高校生。また別の大人からは「言葉を知って、初めて捉えられるものがある」という声があがった。「俳句の『山笑う』という季語を知ってから、春の山の、草木が一斉に若芽を吹く景色に気がつき『これが山笑う、か!』と捉えられた。言葉を知らないと捉えられない感情や景色もあるのかもしれない」一方で、特別で思い入れの深い相手への気持ちほど、既存の言葉とつなげると違和感が生じるという意見も出る。そんななか「あまりに大切で、近い存在の人のことは言葉では表せない。ちょうどいい言葉がないから、新しい言葉を作ろうかな」という声が。この世にまだない、新しい言葉を作ることもできるという観点がもち込まれる。確かに高校生たちの間には「新語」が飛び交っている。「友達同士でしか使わない『新語』が生まれたとき、この言葉でしか表現できない感情を、他の人にどう伝えればいいのだろう、と悩むことがある。高校生の言葉で『笑える』の最上級の表現として『大草原』があるが、大草原でも言い表せないくらい笑えることを、友達と『モーリーファンタジー』と名付けた。私たちの間ではすごく使いやすい言葉だけど、他の人には伝わらないので、もどかしい」という声も。言葉は作ることができる 19「私にしか言えない言葉」2023 OCT. Vol.448
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