キャリアガイダンスVol.448
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「もやもや」したときこそ内面を深く知るチャンス国語教師時代に加え、幼稚園から大学までの各発達段階で、言葉や会話の教育実践を重ねてこられました。また、熊平さんは幼児から社会人までを対象に、リフレクションや対話の普及活動に尽力されています。まずは、座談会であがった高校生の言葉に対する本音(左図)について思うところと、先生方ができるサポートについてお聞きしたいです。川合  ―川合先生は、長年にわたる高校の東川町の高校生は、「すごいもの言葉にできないもどかしさを感じている高校生と、もっと伝わる言葉が必要だと考える先生方。言葉にする力はどうしたら伸ばすことができるのでしょうか。座談会(14〜21ページ)での高校生の発言も踏まえ、コミュニケーションの専門家に語り合っていただきました。を見たとき、すごいとしか表現できないことがある」❶と話していましたが、言葉にはうまく表せないけれど、「すごい」という気持ちがあること自体は表現できていますよね。教師はつい「語彙が少ない」と嘆きがちですが、まずは、高校生の漠然とした気持ち自体を受け止める。すなわちカウンセリングでいう共感や受容が大事だと思います。そのうえで、「その気持ちって、こういうこと?」など、一緒に確認していくといいでしょう。仮に「そうそう。そういうことが言いたかった」と返ってきたら、「そうか。さっきは『すごい』としか言ってなかったけど、そんな表現もできるんだ。それって素敵だね」など、共感、確認、思考の共有を、あせらず段階的にしていくことが言葉を育むうえで大切ではないでしょうか。熊平 「言葉にすると気持ちが削がれてしまう、と思う瞬間がある」❷という感覚は、わかる気がします。言葉にしたくないのであれば無理にする必要はありません。ただ、もやもやした気持ちは心の中で複数の価値観が混ざっている状態なので、そこを掘っていくことは自分の内面を深く知るチャンスでもあるんです。ですから、川合先生が言うように誰かが伴走したり、座談会に先立ち生徒さんが体験した「認知の4点セット」(15ページ)などのツールを使ってリフレクション(内省)することで、内面さん学校法人東洋大学京北幼稚園園長川合正思いの言語化と、その先にあるものかわい・ただし●東洋大学大学院修士課程修了。京北中学校・高校および京北学園白山高校(東京・私立)で校長を歴任。上智大学カウンセリング研究所修了後助手を3年間経験するなど、心理学の知見を生徒との対話や親子のコミュニケーションなどに活かす。読売教育賞最優秀賞受賞。東洋大学経営企画本部事務室参与を経て2015年より現職。取材・文/堀水潤一 撮影/平山 諭2023 OCT. Vol.44822

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