は別々なものと思われがちですが、そうではないことが脳科学で言われてきました。感情の声を正しく聞き取ることで、自分の考えに出会うことができるんです。そのことを実感したのが、川合先生とご一緒したオランダのピースフルスクール(※)の視察でした。そこでは4歳児が、「こういうときは嬉しい。なぜなら…」と、状況と気持ちを言葉でつなげる練習をしていました。川合そうそう。大勢の幼児が輪になって、「今朝、おいしい目玉焼きを食べたのでハッピー」など、自分の感情と、その理由を言葉でしっかりと説明する。熊平なげることで、人は自分の考えを生き生きと述べることができるんです。例えば、幼稚園の夏祭りの感想を園児に尋ねたところ、20人全員がそれぞれ違うリアルな話をしました。子どもはそういう状況でほかの子と似た話をしがちなので、本当に驚きました。一方で私自身を振り返ると、「今、嬉しい?」なんていちいち聞かれないため、感情に言葉を添えることをしてきませんでした。そもそも日本の社会は、感情を表に出すのは恥といった規範意識や、同調圧力が強く、感情を押し殺すことが多いのではないでしょうか。思考停止とよく言われますが、むしろ問題なのは「感情停止」の方ではないか、と思うほど。自分自身すると何が起こるか。気持ちにつの言葉を発するためにも、こうした訓練が幼いころから必要だと思いました。本来は幼児教育段階から始めるべ――した評価モードになっていると、発すきという指摘ですが、高校教員からは、「考えていることを伝えられず黙り込む」「言葉遣いが単純」「話がまとまらず長々話す」などが課題としてあがります。どうすれば言葉の発生を促すことができるとお考えですか?川合現場の苦労はわかりますが、座談会の高校生のように、実は深く考えていることもあります。「黙り込む」というけれど、何かが心の奥にあるのかもしれないし、「単純な言葉」というけれど、表現できないほどの思いがあるのかも。「長々と話す」のも、言いたいことがたくさんあることの裏返し。プラスにリフレーミングすることが大事です。熊平表面的な言葉だけに注目すると、先生方のなかにある目標に達しているかどうかで判断してしまいがち。そうる言葉も、先生の期待に沿うような上辺のものになりかねませんよね。川合評価するのではなく、言いたいことをいかに拾うか。例えば推しのアイドルの話題で、「世界一好き、全部好き」など、大きくて抽象的なことを言うわけでしょう。それを小さく、具体的に、「どういうところが好きなの?」と聞いてみる。すると「笑顔が素敵。いつも笑っている。本当はつらいときもあるはずなのに」と答えるかもしれません。熊平川合先生が、会話で心掛けている「大きいものは小さく。抽象的なものは具体的に。否定的なものは肯定的に」というのは、思考を整える一種の型ですよね。こういった型を活用することで、先生を媒介にしなくても、自問自答できるようになっていくものです。また、評価や判断を挟まず、好奇心をもって聞けば生徒も、「どうしてだっけ?」と自分に問うことができると思います。熊平さんは、自分の考えを言葉大きなことは小さく抽象的なことは具体的に聞く時間より話す時間。教室にアウトプットの機会を感性あふれる高校生の新語や造語。しっかりモノを捉えている証しコミュニケーション能力が高く、相手も自分も大切に思い、主体的に問題解決に取り組む子どもを育むための知見が満載。中高一貫の男子校に長年勤めた川合先生ならではの教室での具体例や、家庭での応用の仕方についてのコメントも多数。
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