本校は1965年の創立時から1クラス30人学級の少人数制を特徴としています。建学の精神「私塾」「道場」「自主独立」「スポーツマンシップ」「自然に接する」の中で最も重視しているのが「私塾」です。「私塾で師と仰ぐ人のもとで塾生が、師に私淑して直接に師の人格的感化に浴し、人間として成長していく」。これが教育の原型と考えており、その実現のための少人数制です。 教育は生徒が主役。学校が生徒を「育てる」というのは傲慢だと私は考えています。生徒がもつ「育つ」力を信じ、教員はそれをサポートするだけという謙虚さが必要です。リスペクトされる側が謙虚さをもつことでさらに師弟関係は強くなります。教員に求めるのは師であるというプロ意識を常にもって振る舞い生徒に接することと、生徒が育つことを待つ勇気です。本校の先生たちはベテランから若い先生まで、お互いの強みを共有しながら切磋琢磨してくれています。 2015年の創立50年改革では、伝統を継承しつつ不易流行を実現する多角的な金蘭千里中学校・高校352023 OCT. Vol.4481965年創立。男女共学の中高一貫校。30人学級の少人数制、定期テストの代わりに毎朝行われる「20分テスト」などきめ細かい指導で、入学時から卒業までの学力の伸び幅が高いことで知られる。取組を始めました。校外資源を活用したキャリア教育・国際理解教育の充実、ICT化の促進、本校の教育の要である毎朝の「20分テスト」の充実、自主性伸長のための企業コンテストへの取組、コミュニケーション能力の育成としてプロの指導による演劇ワークショップなど、現代社会で求められる力が育ち、生徒たちがそれを発揮できるよう環境を整備しています。 私は常に「学校は生徒には一流のものを与えなければならない」と言っています。一番良いものがわかれば、違いを見分ける力が身につくからです。ですから、学校はハイクオリティ、ハイレベルな教育を提供し続けなければなりません。 私が校長になった翌年の1997年から続けているのが英国イートン校などへの海外研修です。500年もの歴史をもつ名門校で約3週間の寮生活を通して、人に流されず個人を確立する「自主独立」のパブリックスクールの精神を生徒たちは体感し学んできます。 また、感性教育にも力を入れており、一例として、隣接する千里金蘭大学の音楽専用ホールに大阪フィルハーモニー交響楽団などを招き、生徒と保護者が共にクラシック音楽を鑑賞するファミリーコンサートを毎年開催しています。 他人に関心をもつことが教員の務めと考えます。目の前の生徒が何に困っていて、何を与えれば成長することができるかを考えるのが仕事です。そして、我々の仕事の作品が卒業生たちです。作品である卒業生がどれだけ母校を訪れてくれるかが学校に対する評価に思えます。大勢の卒業生が顔を出し、教員として戻る者、新校舎の設計をした者など、関係が深く長く続くことが我が校の誇りです。つじもと・けん/1940年生まれ。大阪大学法学部卒業、同大学院法学研究科公法学修士課程修了。高校時代まで政治家を志していたが、大学2年の時に60年安保を経験。当時、敢然と日米安全保障条約について語る国際法の教授の姿に「この先生は本物」と感じてゼミに加入。さらにその教授からの学びを欲して大学院まで進む。1965年、「師に私淑して直接に感化に浴す」という自ら経験したことを建学の精神に唱える、金蘭千里中学校・高校創設時に社会科教員として初任。1992年から教頭、1996年から校長を務め、2005年から金蘭千里学園理事長、2018年より学園長を兼務。まとめ/長島佳子 撮影/山田紗基子30人学級の伝統は師に私淑する私塾の環境(大阪・私立)一流のものに触れる経験により、視野を拡げ見分ける力がつく
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