キャリアガイダンスVol.448
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三川櫻井三川櫻井 クラス担任をしていたとき、興味をも三川でも、動画配信にはリスクもあります。櫻井三川ユーチューバーを目指す生徒にはリス櫻井不確実な面をもつ職業は教員だけではないのに、教員を特別視していることに気づきました。自分の仕事だからこそ、生々しい面も見ているだけに「うかつに背中を押してはいけない」と躊躇していたのかもしれません。でも、ほかの職業にも、就いた人にしかわからない苦労はあるはず。櫻井三川櫻井 はい、私はそう思います。「新しい仕事が増えてブラックになった」と見る人もいます。でも新しい教育を受けて育った今の高校生が働くころには、意識が変わっているはず。今は過渡期で、これから教員の仕事内容や、働き方への評価が変わるかもしれません。ほかの職業なら背中を押せるのに…働き方の理想は。鍵を握るのは主体性?難しい問題ですね。ブラックという言葉はひとまず置いておいて、櫻井先生ご自身は、教員という仕事のどんなところに、やりがいを感じていらっしゃいますか?多感な時期を送る生徒たちの、成長や変化の過程に深く関わることができるところです。進路指導でも、それぞれの向き・不向きを知り、個別に声かけができるので、やりがいがあります。個別にアプローチをして、生徒の可能性を開いていくのですね。ちそうな生徒に、地域の探究活動を勧めたんです。のちにその生徒が「地域の魅力を発信するためにユーチューバーになる」と言い出して、実現させた。自分が関わることで生徒が変わっていくのは嬉しいです。櫻井先生にご不安はありませんでしたか。心配はありました。炎上や誹謗中傷など、考えられるリスクについて率直に話したので、信頼できたのだと思います。クを伝えたうえで応援されているのに、教員を目指す生徒に対してだけ悩まれているのは少し違和感がありますが、いかがですか。ああ、確かに…。ほかの職業については、マイナス面やリスクも考えたうえで、本人がやる気ならば応援したいと思っているのに、自分の職業にはブレーキがかかっていたのかもしれません(気づき①◀三川さて、櫻井先生ご自身は、自分の働き櫻井はい。ただ率直に言えば、全国の先生三川櫻井先生は「自分がしたい仕事をして櫻井三川 では本来、どのような働き方が望まし方をブラックだとは思っていないのですよね。方のなかには遅くまで仕事をされていたり、家に仕事を持ち帰っていたりする方もいらっしゃいます。最近は、教科指導や部活指導以外にも、探究活動やキャリア教育など、教員が担う仕事の範囲が増えている。ただ私の場合は、そういう近年増えた領域の仕事が、たまたま好きなんです。自分がやりたい仕事をしているので、ブラックという感覚がないのでしょう(気づき② ▼)。いる」という意識でいらっしゃるのですね。力するためにも、不要に感じることはできるだけ業務の見直しをしています。業務量が増えれば、取捨選択が必要です。ただ、そもそも裁量を与えられていない若い先生の)。なかには「この業務はやめてもいいと思うのに、慣例になっていて、なかなかやめられない」と悩んでいる方もいるでしょう。いと、櫻井先生はお考えになるでしょうか?はい。自分が大事だと思う仕事に注教員の仕事は、誰かから強制や命令をされて行うものではなく、教員一人ひとりの自主性や自律性に委ねられているもののはずです。例えば部活の大会ひとつとっても「毎年出場しているのだから、今年も出なければいけない」と思考停止せず「私は不要だと思うから、生徒たちにも意見を聞いてみよう」といった提案をしていいはず。そうした主体性をもてるかどうかで、自身の働き方がブラックかどうか、評価も変わると思うのですが。昨今、働き方改革が叫ばれていますが、それは「働く時間をいかに少なくするか」という問題だけでは必ずしもない、ということですね。それぞれが自らの裁量で、主体的に仕事に取り組める。そんな「意識改革」も必要、とお考えなのでしょうか。教員の仕事といえば教科指導・部活指導だった世代には、気づき①気づき② 2023 OCT. Vol.44838三川先生櫻井先生先生ご自身はやりがいをもって働いているのに、教員を志望する生徒やその保護者が、教員の働き方について不安視しているのですね。本当は教員という仕事の魅力を伝えたいのですが、世間の目も厳しく、安易に「やりがいのある仕事だ」と言っていいのかと…。

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